こざかい葵風館
CAn
10. noviembre 2021
All photos by Neoplus Sixten Inc.
CAnによる愛知県豊川市の「こざかい葵風館(きふうかん)」。小坂井町にできた市の行政支所を中心とした複合施設で、2017年に実施された「小坂井地域交流会館設計業務委託公募型プロポーザル」で最優秀案に選定されたプロジェクト。建物内はもちろん全方位的に様々な使い方ができるユーティリティ性の高い施設。[Kozakai Kifukan Community Center, CAn]
敷地には豊川市と合併する前からの小坂井町役場が建っていたが、老朽化のため豊川市の行政支所と、右奥に見える旧児童館・生涯学習センター・図書館などを集約した複合公共施設として建て替えた。
さらに地域のお祭り「葵まつり」のメイン会場としての機能も求められ、写真のような「葵の広場」と名付けたフリースペースを擁する。ちなみにこの「葵」はこの地を治めていた伊奈本田家の家紋「立葵」のことで、その後松平家(=徳川家)の「三つ葉葵」の発祥であるといわれている。
建物は敷地の中央に配置し明確な裏表がない構成。南北(写真右・左)に駐車場、西側に「緑の広場」、東側に前述した葵の広場が囲み、施設利用者は各方向から入館することができる。
また祭りの際には駐車場も開放し、右に見える黄色の小上がりがステージになる。手前、緑の広場側の建物内が児童館となる。
東側からアプローチを臨む。南の駐車場に向かって大きくせり出した庇は、祭りの際はもちろん、バス停やタクシー乗り場、障害者用の駐車場、右手ガラス張りの集会場と連続させたり、且つ災害時等でも何かと活躍しそうだ。舗装は透水性のあるポーランスコンクリートを選択。
厚みのあるボリュームを積み上げ、さらに積み上がったボリュームを水平方向にずらし、そのまま庇とした特徴的な外観に、何かをモチーフとしたような有孔金属板が覆っている。
モチーフは「小坂井の風車」と呼ぶ地域の郷土玩具で、古くからお守りとして愛されている。この風車がクルクルと回る様子をパターンデザインとした。
Image: CAn
「(公共)建築は地域に愛されることが必要だが、建築に地域の方々が共有できる物語を込めることは大切だと思う。」と伊藤さん。
外皮はダブルスキンとして仕上げられており、経年劣化がほとんどない耐候性の非常に高い鋼板(エテルニット)を採用。これによりメンテナンスすることなく数十年後もほとんど外観を損なわずに存在することが可能となる。
設備の給排気口や雨樋を外皮の内側に隠蔽することで、建物全体がシンプルなボリュームとなる。さらに外皮は止水面に当たる太陽光を遮り、紫外線劣化による維持管理の負担を軽減できるメリットがある。
庇は所々抜き、建物内へ外光を導く。
東の葵の広場側から建物内へ。
中は東西をホールが貫く。その両側に行政支所、集会室、奥に児童館、手洗い室、調理室などが配される。
ホールを進むと中央に細長い吹き抜けが現れる。上下方向はもちろんのこと、二層の空間全体をひとまとめにしてくれるような存在だ。左が児童館、奥にはラウンジスペースがある。
ラウンジスペースはテラスに連続する。
ラウンジスペースで見返す。ハイサイドライトからの柔らかな光が全体を包む。
ずれた吹き抜けが空間に変化を生み出していることにも注目したい。
2階への階段は随分と余裕のある広さ。「階段のスペースが取れるのであればできるだけ広くする。」と伊藤さん。
2階は階段を上がってすぐにブックディテクションを設けた。吹き抜けの周囲をラウンジ兼、図書閲覧スペースとして拡張したためだ。
2階はほかに和室、会議室・多目的室が複数、中庭のようなテラスも設けられており、1階同様様々な目的で利用される。
伊藤さんは、師匠である原広司さんが説いた「空間の豊かさを感じるための一番プリミティブな表現は、広いか、長いか、高いかだ。」ということを常に心掛けて設計しているそうだ。
吹き抜けを完全に一周する60mの造作家具で繋いで連続性のある居場所を創り出している。家具デザインは藤森泰司さんが手掛けた。
テラス側では天井が低くなり、ソファに座ると目の前が明るく開ける。
図書開架スペース。暖かな色味で落ち着いた雰囲気に変わる。外周に沿ったハイサイドライトと、3つの光壺から外光を取り込む。
天井は繊維の細い木毛セメント板で仕上げた。
天井に大きく穿たれた光壺が空間のアクセントとなっている。
一角に小上がりのキッズ図書コーナーも設けた。
北東の角には学習コーナー。遠くに三河山地の山々を望む。
ほかの開口からは外壁パネルがインテリアの一部のように見えている。
伊藤恭行さんと、担当の大熊敏佳さん。
「複数の機能が複合した施設なので異なる目的を持った市民が訪れますが、一人で来ても複数で来ても、短い滞在時間でも長時間でも居場所が見つけられる建築となることが大切だと考えました。この建築の真ん中には施設全体を結びつける細長くて天井の高い空間があります。その中に、異なるスケールの空間と家具を設え、様々な自然光(光の状態)を混在させることで多様な居方ができる場を創り出すことを試みました。」と伊藤さん。
計画概要・平面計画・ランドスケープ・平面図・立面計画・断面計画(→PDFダウンロード)
Movie: CAn
【こざかい葵風館】
設計・監理:CAn (C+A Nagoya)/伊藤恭行、磯谷直昭、大熊敏佳、坂田佳隆
構造設計:藤尾建築構造設計
設備設計:設備計画
外構設計:SfG
家具デザイン:藤森泰司アトリエ
施工:岡田鳥井特定建設工事共同企業体、アンデン、松栄管工
建築主:豊川市
主要用途:支所、児童館、生涯学習センター、図書館
所在地:愛知県豊川市小坂井町大堀 10
URL:www.city.toyokawa.lg.jp/shisetsu/choshaannai/kozakai.html
構造:鉄骨造
規模:地上2階建、敷地面積 6,924.64㎡、建築面積 2,207.60㎡、延床面積 3,107.27㎡
建蔽率:36.21%(許容 60%)
容積率:51.44%(許容 150%)
Posted by Neoplus Sixten Inc.
設計・監理:CAn (C+A Nagoya)/伊藤恭行、磯谷直昭、大熊敏佳、坂田佳隆
構造設計:藤尾建築構造設計
設備設計:設備計画
外構設計:SfG
家具デザイン:藤森泰司アトリエ
施工:岡田鳥井特定建設工事共同企業体、アンデン、松栄管工
建築主:豊川市
主要用途:支所、児童館、生涯学習センター、図書館
所在地:愛知県豊川市小坂井町大堀 10
URL:www.city.toyokawa.lg.jp/shisetsu/choshaannai/kozakai.html
構造:鉄骨造
規模:地上2階建、敷地面積 6,924.64㎡、建築面積 2,207.60㎡、延床面積 3,107.27㎡
建蔽率:36.21%(許容 60%)
容積率:51.44%(許容 150%)
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