大阪・関西万博 国内パビリオン8選

SANAA, Shigeru Ban, Tetsuo Kobori, Mitsubishi Jisho Design | 16. 4月 2025
All photos by NeoplusSixten Inc.
◼️ 日本館 / Japan Pavilion
総合プロデューサー・総合デザイナー:佐藤オオキ (Oki Sato / nendo)
建築デザイン:日建設計 (Nikken Sekkei)

大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を開催国としてプレゼンテーションする拠点であり、テーマの具現化や、日本の取り組みの発信を行う。
円環状の構造体によっていのちのリレーを体現する。
主にCLTを用いて建てられており、会期後に様々に再利用できるよう設計されている。
日本館案内図
館内をくまなく巡り印象的な展示が飽きることなく続く。
“ごみを食べるて動くパビリオン” 謳っており、万博会場内で出たごみが微生物のはたらきによって分解しバイオガスを発生させ、それをエネルギーとしている。
外周の開廊を通って館内へ。(日没後の様子)
「ファームエリア」「ファクトリーエリア」「プラントエリア」の3つエリアを巡り循環を体験する。
〈ファームエリア〉
藻類の持つポテンシャルを可視化
藻類は、ひまわりと比べて油の生産効率は14倍、大豆と比べてタンパク質の生産効率は36倍など。
いのちみなぎる藻のカーテン
チューブの中でぐんぐん育つ無数の藻類。これが未来の「森」の姿。藻類が光合成しながらあたらしいエネルギーを生み出す。緑のチューブが織りなす幻想的な空間。
展示空間はリング状に構成された構造壁に囲まれており、そのまま仕上げなしで見ることができる。CLT同士の間のガラスはサッシュを使わず直接はめ込まれている。すっきりした見た目の隙間から採光したり、隣の空間や外側の風景が見え隠れする。
またCLTだけでなく鉄骨も使われており、CLTは再利用しやすいよう、加工は最低限に抑えていることも分かる。
〈ファクトリーエリア〉
ごみから生まれた物質やエネルギーは、やがて素材へと生まれ変わり、ここファクトリーエリアで人の生活で活躍する「もの」へと姿を変える。
ファームエリアで育てられていた藻類を原料に加えた植物由来のプラスチックで、日本館の中で使われるプロダクトを製造中。
〈プラントエリア〉
ここでは主役の姿を目にすることはできない。肉眼では見られない微生物のはたらきそのものが展示物。
会場で出たごみは、このエリアで微生物によって分解され、電気を生み、きれいな水を生み出す。やがて訪れる循環型社会の未来像を示している。
パビリオンの中心に現れる円形の中庭には巨大な水盤。微生物のチカラを借りて純水に近いレベルまで浄化された水の澄みきった姿。
火星の石
2000年、南極で発見された世界最大(約13kg)の火星からの隕石。一般公開されるのは今回が初めて。
(火星に衝突した大きな隕石が、火星の地表を宇宙に放出させ、それが長い年月をかけて地球に隕石として落下した)
◼️ Better Co-Being / Signature Pavilion
プロデュース:宮田裕章 (Hiroaki Miyata)
建築デザイン:SANAA

パビリオンの名称「Better Co-Being」は、つながりのなかで共に生きる「未来への共鳴」を意味する。人類がデータを分かち合い共創する未来社会。その象徴が森であると構想。屋根も壁もないパビリオンで、時代の転換点における建築の役割を再定義する、森と溶け合い響き合うデザイン。
ここで偶然集った人々がグループとなり、「ふしぎな石ころ」を持って共にパビリオンを巡る。石ころは光ったり、鳴いたり、人々をある方向へ導いたり、共鳴し合ったりする最新技術を用いた3Dハプティクスデバイスだ。
4層のグリッド状のキャノピーが細い柱によって11mの高さに持ち上げられ、雲のように森と溶け合う。
塩田千春のインスタレーションも一緒に溶け合っている。
精密に加工されたグリッドキャノピーが空を違った姿に見せてくれる。
森の中には霧が発生し虹が見えることもある。森の奥で屋根と壁のあるゲストルームを見つけた。
◼️ いのちの遊び場 クラゲ館 / Playground of Life: Jellyfish Pavilion / Signature Pavilion
プロデュース:中島さち子 (Chisako Nakajima)
建築デザイン:小堀哲夫 (Testuo Kobori)

海を漂うクラゲの神秘的な様子や、言葉で説明しきれない何かがもつ魅力を表現し、いのちや創造性を象徴。会期中の活動により成長していく。
地上から「プレイマウンテン」を抜けて、山の上には創造の木を中心とした「いのちのゆらぎ場」。創造の木の周囲には五感を使って楽しめる仕掛けがいくつもある。
30m×30mほどの大屋根は鉄骨造。茶色いトラス架構が創造の木から放射状に広がり、その上にカーブを描く白い膜屋根を張るフレームが見える。それらを支持する柱は柱然と見えないようランダムに斜めに立てられている。
複雑に組まれた木材は4面に複数の穴が空けられ、材同士がロープで結合されている。ロープで留めることで組み立てに “遊び” ができて施工し易い。
またこの木材を会期後転用できるよう、解体しやすく材も傷めないメリットもあるだろう。
ごちゃまぜオーケストラ
様々な楽器や動物、祭りなどが描かれたカードをかざすと即興のごちゃまぜセッションがはじまる。
地下は創造の木の根っこの震動や音を全身で感じられたり、没入型の360度映像・音響体験ができる。
プロデューサーの中島さち子さん。
◼️ いのち動的平衡館 / DYNAMIC EQUILIBRIUM OF LIFE / Signature Pavilion
プロデュース:福岡伸一 (Shinichi Fukuoka)
建築デザイン:橋本尚樹 (Naoki Hashimoto)
一筆書きされた巨大なリングとワイヤーだけで構成された大きな屋根をもつ建築は、生命が動的平衡を保ちながらうつろいゆく流れの中で、一瞬だけ立ち現れる自律的な秩序を表す姿を具体化している。
2024年、東京で開催された橋本尚樹の個展で披露された1/15構造模型。
>>展覧会の記事
3D映像のように表現される美しいインスタレーションで生命の動的平衡を体感し、最後にスクリーンでは福岡伸一からのメッセージが流れる。
◼️ Dialogue Theater いのちのあかし / sign of life / Signature Pavilion
プロデュース:河瀨直美 (Naomi Kawase)
建築デザイン:周防貴之 (Suo Takayuki)

旧折立中学校、旧細見小学校中出分校の廃校舎を移築。単にノスタルジーを味わうのではなく建築に刻まれた時間を丁寧に分解し3棟の新しい建築に生まれ変わらせた。
まずは敷地の中央にあるイチョウを目指す。
木の周りには奈良や京都の里山の植生を再現した憩いの空間。様々な草木花にふれるうちに、いつしか来場者の心は忙しない日常を忘れ、対話に向けた準備が整う。そして2階のホワイエへ。
奈良と京都の廃校資材を譲り受けてつくられた建築。たくさんの先生・生徒・保護者たちが過ごした時間が、キズや落書きとして残る建物の中を進みホワイエへ。
ホワイエに集った参加者はシアターへ。
このパビリオンは、対話を通じて世界の至るところにある分断を明らかにし解決を試みる実験場。ここで毎日異なるテーマで初めて出会う2人が対話する。1人はスクリーンの向こう側で、もう1人は来場者の中から、会場となる対話シアターの手前にあるホワイエで選出される。
対話シアターを出ると目の前に森の集会所がある。新旧の建材とガラスがつくりだす空間は光に包まれる。ここでは思い思いに過ごすことができる。
設計を担当した周防貴之さん。
◼️ BLUE OCEAN DOME
プロデュース:原研哉 (Kenya Hara)
建築デザイン:坂茂 (Shigeru Ban)

海洋プラスチックごみゼロを目指し、海洋資源の持続的活用と海洋生態系の保護をテーマにする。3つのドームからなり、それぞれ竹、カーボン、紙管でできた新しい構造のドーム。
中央の巨大なドームでは半球型のスクリーンで「水の惑星」のリアリティを感じることができる。
まず、竹でできたDome Aへ入る。
ここでは超はっ水塗料をほどこしたインスタレーションで、形を変えながら駆け巡る水のスペクタクルを鑑賞し、水という物質を見つめ直す。
竹は木の3倍強度があるが、筒のままだと強度にばらつきがあり直射日光に弱いため、近代の建築には使用できない。そこで細かく裂いて乾燥させた集成材とすることで、安定した強度を実現している。
Dome Bはカーボンチューブを使用した世界初の建築。シアターになっており、フルCGで描かれた海洋世界の映像を、半球の超高精細LEDスクリーンで体験できる。
カーボンは鉄の1/5の軽さで同等の強度があるが、価格が高いため軽量化する必要があるもののみに使われてきた。
本万博会場は海の埋め立て地で地盤が弱いため、杭工事をなくす軽量の建築にするために、カーボンを使用する意味がある。
Dome Cは坂茂の代名詞ともいえる紙管を使ったドーム。
一連の展示コンテンツを体験した後は、海の未来を考え続けるための交流拠点へ。海の未知を解き明かす研究者や、海の課題に立ち向かう起業家、企業人、海をなりわいとする人や、海を表現する人など人類の叡智を知る。
CLTを球形に加工したジョイントを使って、紙管をトラス形状に組み上げていることがわかる。
◼️ 万博サウナ「太陽のつぼみ」/ TAIYO TSUBOMI, EXPO Sauna
建築デザイン:KOMPAS

最小限のアルミフレームとETFEフィルムと空気だけで構成された、テトラ形状のユニットによる膜建築。サウナの概念を超えた未知なる体験。繊細で力強い膜によって構築されたサウナ空間に、海、草木、風の空気を纏った太陽のエネルギーが降りそそぐ。
上の写真がつぼみのように熱を包むサウナ。こちらが水風呂。
そして光に包まれ風が抜けるラウンジ、という個性的な膜建築の3棟が並びサウナリトリートを満喫できる。
>>動画
設計を担当したKOMPASの小室舞さん。
小室さんはほかに「フューチャーライフビレッジ」の設計も担当した。
>>大阪・関西万博 若手建築家による全20施設レポート
◼️ 三菱未来館 / Mitsubishi Pavilion
デザイン・建築設計:三菱地所設計 (Mitsubishi Jisho Design)

地上に浮かぶマザーシップのような建物。未知なる深海から宇宙、いのちを巡る旅を没入型映像で体感できる。パビリオンは地下1階・地上2階建てで、すり鉢状の楕円形半地下空間の上に菱形が覆いかぶさるように内接、さらにそのひし形に長方形が内接する構成となっている。
建設から解体までの過程をトータルにデザインする「小さな資源循環」を目指している建築。大切な地球資源である大地を「間借り」していると捉え、万博が終わったらそっと元に還せるよう建物と地面がなるべく接しない構造とし、掘削した土は敷地内のマウンドに用いてそのまま埋め戻す計画。
単管パイプや縞鋼板を使用した地下エントランスから1階へ。没入型映像による旅に出かける。
内外装に使われるのは足場板、単管パイプ、現場用照明、ブルーシート、OSB、落下防止ネットなどで、仕上げずにそのまま使用し会期後他の現場での転用を可能としている。
またパビリオンを照らす照明は設けず、半透明のポリカーボネート折板が内部の光を透過し、夕暮れにはパビリオンが行灯のように浮かび上がる。

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