大阪・関西万博 若手建築家による全20施設レポート

11. 4月 2025
All photos by Neoplus Sixten Inc.
1970年開催の大阪万博を担当した若手建築家が、その後著名な建築家となったように、2025大阪・関西万博においても若い世代の活躍、飛躍のきっかけとなるよう、将来が期待される若手建築家を対象に行ったプロポーザル。
会場内の「休憩所」「ギャラリー」「展示施設」「ポップアップステージ」「サテライトスタジオ」「トイレ」の計20施設。
「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインコンセプトの下、SDGs(持続可能な開発目標)達成につながる、意欲的かつ大胆な提案により、会場内に個性豊かで魅力的な博覧会施設を創出している。

休憩所1    大西麻貴+百田有希/o+h
休憩所2    工藤浩平建築設計事務所
休憩所3    山田紗子建築設計事務所
休憩所4    服部大祐+新森 雄大/Schenk Hattori + Niimori Jamison    
ギャラリー    金野千恵/teco    
展示施設    小室 舞/KOMPAS JAPAN    
ポップアップステージ(東)    桐 圭佑/KIRI ARCHITECTS    
ポップアップステージ(西)    三井嶺建築設計事務所
ポップアップステージ(南)    萬代基介建築設計事務所
ポップアップステージ(北)    佐々木慧/axonometric    
サテライトスタジオ(東)    野中あつみ+三谷裕樹/ナノメートルアーキテクチャー    
サテライトスタジオ(西)    佐藤研吾建築設計事務所
トイレ1    棗田久美子/GROUP    
トイレ2    小林広美 + 大野宏 + 竹村優里佳   
トイレ3    小俣裕亮建築設計事務所
トイレ4    浜田晶則建築設計事務所
トイレ5    米澤隆建築設計事務所
トイレ6    隈 翔平/KUMA&ELSA
トイレ7    鈴木淳平、村部 塁、溝端友輔/HIGASHIYAMA STUDIO+farm+NOD    
トイレ8    斎藤信吾建築設計事務所
◼️ 休憩所1(リング南西外)
建築デザイン:大西麻貴+百田有希
人間の五感を使って感じられる生き物のような建築。毛皮のような屋根や、柔らかい布をめくって入る開口部、すべすべした壁など建築の要素を柔らかく親しみやすいものにすることで建築の可能性を広げる
内部はサーカステントのような雰囲気で中心に子どもの遊び場がある。
奥にはたくさんの授乳室や休憩スペース、トイレが並ぶ。
◼️ 休憩所2(リング北西外)
建築デザイン:工藤浩平
仮設建築を半年という短い時間の単位ではなくもっと壮大なスケールの時間感覚でつくれないかと考えた。大阪城にも使われた瀬戸内産の石を宙に浮かべ、パーゴラとして活用。
会期後は大阪湾の窪地の改善や海の生き物の居場所となるよう、石を海へと還元し、「海の資産」として未来へと引き継ぐ。大地、空、海をまたぎながら、何万年も前の過去から、何万年先の未来へと時間をリレーする。
◼️ 休憩所3(森南東)
建築デザイン:山田紗子
静けさの森につづく植物群と小さくもユニークな人工物とが寄り集まる休憩所。トイレ、案内所、休憩室に加えて、応急手当所、警察官詰所、情報通信機器の機械室など、来場者が立ち入らない建物ボリュームも多い。敷地全体はフードトラックやテーブルが並ぶ飲食の場でもあり、多くの来場者が日陰を求めて集まることが予想される。頭上に広がる樹冠や立ち並ぶ幹、背の高い草花に覆われたお椀型のマウンドに、建築物の柱や壁、屋根が寄り添い、心地よい半屋外空間を連続させることを試みた。
(©大竹央祐)
それぞれの植物や建物がもつ異なる色彩と形の連なりが編み込まれ、独自のテキスタイルを伴った風景が其処此処に立ち上がる。
(©大竹央祐)
パビリオンという自律的なデザイン倫理が建ち並ぶ万博の場で、それでも個と風景について考えたいと思い、敷地内では完結しない建築とランドスケープの在り方を目指した。
(©大竹央祐)
◼️ 休憩所4(森北東)
建築デザイン:服部 祐+新森雄大
敷地要件による土の掘削、それを型枠にした鉄筋のパーゴラ屋根でつくられ、半年間に現れる「多様な他者と共にある広場」。こちらとあちらの断絶を弱めていき、共に生きる感覚を今一度思い起こすことは重要だと考える。
◼️ ポップアップステージ 北
建築デザイン:佐々木慧
未加工の丸太材に囲まれた森の中のようなイベント広場。木材は万博会期中に乾燥し、会期後加工されどこかで別の建築となることで大きな環境・循環の中に万博を位置付けようと試みた。
◼️ ポップアップステージ 東内
建築デザイン:桐 圭佑
雲は形を変えながら日差しを柔らかく遮り、ステージと客席を一体的に覆う。雲がこの場所に集う人々の一体感を生み出す。世界とつながる雲によって多様でありながらひとつである屋根を表現。
◼️ ポップアップステージ 東外
建築デザイン:萬代基介
シンプルかつ最小限のリングフレームによって空間をつくるドームで、会期後も使い続けられるサスティナブルな建築を目指す。木々と共に建ち、外皮に映像を投影すると建物全体が生命体のように変化する
東ゲートから入ってすぐの場所。
◼️ ポップアップステージ 西
建築デザイン:三井嶺
鳥居などにみられるように柱2本が人間の作る場の最小単位のひとつ。それよりもシンプルな状態、例えば梁が1本でも十分ではないかと考えた。梁は松の皮付き丸太。たった1本でも場をつくる堂々とした力強さと優しさを持つ。
こちらは西ゲートから入ってすぐの場所。
◼️ トイレ 1 (P83 南東リング内)
建築デザイン:井上 岳+齋藤直紀+中井由梨+棗田久美子
夢洲にはかつて植物や鳥が息づく独自の生態系がつくられていた。ここは生態系がアーカイブされた"夢洲の庭"。夢洲の過去現在未来に思いを馳せ、自然と人間の共生のあり方を再考できる場。
工事現場の仮囲いのようなドア。
中にはドアがもう一枚見える。入ってカギを掛け、用が済んだら反対側のカギを開けて出る。
すると中庭が現れる。
◼️ トイレ2 (s72 南西リング内)
建築デザイン:小林広美+大野宏+竹村優里佳
大坂城再建のために切り出されたが利用されず残された石を残念石と呼ぶ。これらを建築に取り込むことで残念石と人間の距離が少し近いものとなり、時間をかけて紡がれた唯一無二の力強さが感じられる。
これらの残念石は1620年頃に大野山から切り出し、木津川にストックされ、その後の人々が川の堤防代わりに土留として利用されていたものが1975年に発見された。
切り出された位置から何度か動かされ、現在はまたバイパス工事のために多くの残念石が別の場所に移動途中で、これらもその中のものを利用。
◼️ トイレ3 (s72 南西リング内)
建築デザイン:小俣裕亮
空気でふくらませる風船のような屋根をもつ建築。屋根は光を透過し空間を明るく照らし、気温に応じて上部に水を溜めて冷却する仕組みをもつ。'70年の万博で様々な実験がなされた空気膜構造を引き継ぎアップデートする。
(©new building office)
天候(風の強さや暑さ)に応じて膜屋根が膨らんだりしぼんだり、風に揺られたり、屋根の水を上に溜めて水浴びをしたりする。
それぞれしぼんだ状態と膨らんだ状態。
(©new building office)
手洗いスペース
(©new building office)
◼️ トイレ4 (w47 北西リング外)
建築デザイン:浜田晶則
人、植物、そして環境を土の壁でつなぐ峡谷のような建築。自然界から抽出した有機的な形態を3Dプリンターで土を出力し外壁やランドスケープを構成。人々が集まり自然との共生や循環について考え休息する
最新の建築技術である3Dプリンターを用いた。
岩窟遺跡のような内部。
◼️ トイレ5 (w41 北リング外)
建築デザイン:米澤隆
建築思想"メタボリズム"を55 年の時を経てアップデートし大阪の地にリバイバルさせた。ユニットを積み重ねることで建築を構築。閉会後はユニット単位に解体し、公園や広場などに移設し再利用する計画
◼️ トイレ6 (F42 森北東)
建築デザイン:隈 翔平 + エルサ・エスコベド
トイレを、水をテーマとしたパビリオンとみなした。
空から雨水が落ちて、蒸発し、雲となり、また雨になる。あるいは、溜まった雨水を人が利用して排水管へと吸い込まれていく水が循環するそのプロセスの中に、水と人の多様な出会いをつくる。
トイレという水が必要不可欠な建物の中で、すべての生命の根源である水にまつわる現象を可視化し、その循環の場面を人々が体感できる。
(©KUMA & ELSA)
すべての人間を「ひとつの水の中にいる魚」と喩え、トイレ内部の大半を、性別も世代も垣根のないオールジェンダートイレとした。建物に入ってから出口まで、ひと目で全てを見渡せる死角のない大きな空間で、誰でも等しくトイレを利用できる。
(©KUMA & ELSA)
一方通行の動線を進んで、出口へ向かうと、トイレの排水に使われる雨水が貯まる水庭が見える。
丘のような屋根上をすこし登ると、視線は自然と水の流れる方向を向き、その先には水によって生かされている森(静けさの森)が広がる。
(©KUMA & ELSA)
◼️ トイレ7 (X13 水辺中央)
建築デザイン:鈴木淳平 + 村部 塁 + 溝端友輔
湾曲したパネルは周辺の風景や光を不規則に反射させ、景色を映し込むことで広場に溶け込む。会期後樹脂パネルは粉砕・加工され再利用されることを想定。
3Dプリントされた樹脂パネル。
乱反射した光が内部を照らす。
◼️ トイレ8 (X14 水辺中央)
建築デザイン:斎藤信吾 + 根本友樹 + 田代夢々
視覚・聴覚障がい・車椅子利用者とのワークショップを行い、"こころとからだの性の多様性"にも呼応しながら様々な国籍や宗教にも配慮。異なるもの同士の総体がひとつながりの群となる風景を目指す。
このタワーも個室トイレなので体験してみてほしい。
◼️ サテライトスタジオ東 (水辺東)
建築デザイン:野中あつみ + 三谷裕樹
合理性に価値が見出される木材を非合理的かつソフト面に価値を見出し、従来の建築とは逆のプロセスで"困った木"を用いた建築。ここに集まる個性的なバックボーンを持つ厄介で愛らしい木に新たな価値を与える試み。
NHKや、MBS、ytvのスタジオが入り、万博の情報を発信する。
◼️ サテライトスタジオ西 (水辺西)
建築デザイン:佐藤研吾
テレビ局のスタジオとして正面には小さな広場を設け、訪れた人々の居場所を作る。福島県産材を用いた建築で、基礎も含む大部分が再利用可能で、会期後には再び福島県に移築し地域の拠点施設となる予定。
こちらにはカンテレ、ABC、テレビ大阪のスタジオが入る。
◼️ ギャラリーWEST (L01西ゲート西)
建築デザイン:金野千恵
廃棄食材や食品残渣から製造するベジタブルコンクリートを用いて、暮らしの循環における"匂いのある建築"を創出。2つの異なるサイズ室内空間と大屋根の半屋外空間があり、内外を繋ぎながら多様なアート空間が展開。
ベジタブルコンクリートは、屋根のルーバーピース、家具の座面、外構見切りに使われている。
100×50のチャンネル材を梯子状のユニットにしてベジタブルコンクリートを挟み、それを連結して自重でたわむカテナリー屋根を構成している。

4月13日の開幕から17日まで、サウジアラビアの「ミッションコントロール マーズ」という体験型アトラクションが入る。会期中ほぼ週替わりで展示が入れ替わる。
>>スケジュール表
◼️ フューチャーライフビレッジ (L01西ゲート西)
建築デザイン:KOMPAS (小室 舞)
夢洲の湿地帯をイメージした中庭の周りにユニット群が並び、リング状の通路を巡って自由に回遊する展示施設。ランドスケープと建築が密接に結びついた中庭ではこれからの環境空間の実践を試みている。
常設の展示スペースの他、日替わり週替わりで出展者が入れ替わり未来の情報を発信する。
蛇籠に入る石は溶融還元石という、ごみ等を焼却した灰を更に高温で溶かし無害化・固化させた人口の石。
半屋外空間が多い施設なので、夏場は上部より水を流し冷却する。
併設のトイレも同様の構成で統一感を図った。
【大阪・関西万博】
EXPO2025 Osaka, Kansai, Japan, 20 Facilities Designed by Young Architects

会期:2025年4月13日(日) – 10月13日(月)
場所:大阪市此花区夢洲 (ゆめしま) 
交通:Osaka Metro中央線 夢洲駅
   シャトルバス、高速バス、フェリー
   障がい者を除き自家用車は不可
詳細:www.expo2025.or.jp
   
Posted by Neoplus Sixten Inc.

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