CAt による複合ビル「恵比寿SAビル」と「CAt 新オフィス」

Neoplus Sixten Inc.
1. 6月 2017
Photo by Neoplus Sixten Inc.

敷地面積296m2、建築面積257m2、延床面積1,951m2。鉄骨造地上10階建。1階~4階が教会、4階一部住宅、5階~10階がオフィスの複合ビルだ。

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教会とはキリスト教「救世軍渋谷小隊」。救世軍は建て替え前からビルのオーナーで、CAtは20年以上テナントとしてオフィスに入居していた。
3年ほど前にオーナーより耐震化のため建て替えるので、一時移転を考え始めて欲しいと通達があったという。オーナーはCAtが設計事務所だとはあまり知らなかったようで、通達後、小嶋一浩さんが「模型作って挨拶に行こう。」となって、意気投合し設計の依頼へと繋がったそうだ。

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ファサードにはプランターを使って一面に植栽を施した。殺風景な駒沢通り恵比寿界隈に忽然とグリーンのビルが現れた。

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5月現在、南に面した植栽はぐんぐん成長し、殆ど緑のファサードになっている。

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北側にはビルに囲まれた恵比寿公園。恵比寿によく来てもこの公園の存在にはあまり気付かないかも知れない。

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2階から4階が斜めに削られている。このビルは商業地域に建っているが、公園側は第2種中高層住居専用地域となる。日影規制による影のラインを商業地域内でクリアするために生まれた形状だ。5階以上は影の先端になるので規制外への影となり、床面積を最大限取れるボリュームとなる。

しかしこの日影規制、当該敷地では両隣にビルが密接しているので、果たして意味をもつのかは疑問だ。

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駒沢通り側に戻り、左が教会のホール、中央が上層部へのエントランスホール。

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ホール。礼拝後の食事やミーティング、勉強会、イベント、バザーなど行う多目的スペース。駒沢通りから公園までがトンネル状に抜けており、街やスペースの賑わい、公園の賑わいを南北に繋ぐ。また敷地は南北で1.2mほど高低差があるため、それを利用し階段状のアッセンブリースペースを設けた。

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エントランスホール。左の階段は2階の礼拝堂へ通じ、礼拝のないときは格子扉を閉めることが出来る。右側はエレベーターで、一面が溶融亜鉛メッキ板で仕上げられている。

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2階礼拝堂は2層吹き抜け空間。正面の壁は南で、左と上にスリットが入っており、午前中に行われる礼拝時、東(左)から徐々に光の纏が変化する仕掛けだ。

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この空間は、外観で説明した斜めにカットされた部分の半分。そのため平面が台形になっていることや、公園に面しているため様々な方向を正面として椅子をレイアウトできる。カーテンは淡く透過するものが設えてあり、昼間はご覧のように十字のシルエットが浮かび上がり、夜は逆に外から見たときに十字が現れる。

椅子などの家具デザインは藤本泰司アトリエ、カーテンは安東陽子デザイン、照明は岡安泉照明設計事務所が担当した。

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カーテンを開け、外に出ると公園と連続するようなテラスになっている。規制によって生まれた天高12.5mのエクストラな空間だ。

4階は住居。

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10階テナントオフィス。南北にバルコニーを持ち非常に開放的だ。

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北側のバルコニー。

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恵比寿公園を見下ろす。正面奥が渋谷駅方面。

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階段を使って下の階へ降りると、駒沢通りを挟んだ向かいにこちらのビルが映っているのが見えた。こちらのグリーンが借景として帰ってくるという偶然。

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5階〜9階は同じレイアウト。ここは5階でこの内覧会のあと、CAt自身が入居するフロアだ。

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そして入居後の様子。

エレベーターを降りるとギャラリースペースのような設えのレセプションホール。

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ロゴが入った可動式の亜鉛メッキ板は、以前から使っていたものを流用。右には日本建築学会賞(日本建築学会)やBCS賞(日本建設業連合会)を受賞した「おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館」の盾などが鎮座する。

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一角には2016年10月に亡くなった小嶋一浩さんの書籍などが並ぶ。新しいオフィスが入るこのビルの完成を見ることはできなかった。

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レセプションホールは小嶋さんが特にこだわっていたそうで、来客の出迎えはもちろん、簡単な打合せや、歓談しながら仕事終わりに飲めるような空間も思い描いていたという。

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質実剛健な印象のオフィス。大きく模型制作スペースとワークスペースに分かれている。

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ワークデスクの頭上には吊り棚を設えスペース効率を図る。

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恵比寿公園側のミーティングスペースとバルコニー。遠景に見える建設中のビルはCAtがデザインアーキテクトを務める、渋谷駅南街区プロジェクト「渋谷ストリーム」に建つ180mの高層ビル。

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ミーティングスペースはラーチ材でできた折れ戸で仕切ることもできる。

右手裏側は赤松さんのスペース。

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スタッフはバルコニーにノートパソコンを持ち出したり、スケッチを描くこともあるという。内覧会時には落葉していた木々が初夏を迎えうっそうとしている。

photo: CAt

赤松佳珠子さん。「オーナーさんよりビルを建て替えると聞き、恵比寿公園の緑越しに景色が広がるこの場所に留まりたいと思いました。この場所の魅力を出来るだけ引き出しながら、ビルの価値を高め、恵比寿の新しい風景となることを目指して計画しました。」
 

【恵比寿SAビル】
設計:小嶋一浩+ 赤松佳珠子/CAt
構造設計:オーク構造設計
電気設備:EOS plus
機械設備:知久設備
照明(1-2F, 外部):岡安泉照明設計事務所
テキスタイル:安東陽子デザイン
家具:藤森泰司アトリエ
施工:藤木工務店

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