11. 6月 2022
All photos by Neoplus Sixten Inc.
センブンノイチ(林要次+間宮晨一千+村山一美)による東京都中央区の複合ビル「S-TOKYO」レポート。地方と首都圏のユニークな企業・プレイヤーの活動拠点となり、新たなコトやモノを生み出すきっかけ作りとなる “小規模文化施設”。
築40年以上の6階建てオフィスビルをリノベーション。1階にカフェ、2階サロン・ショーケース、3階シェアオフィス、4階シェア会議室、5階センブンノイチオフィス、6階が岡野バルブ製造オフィスという構成。
クライアントである岡野バルブ製造株式会社は北九州市門司に本社を構える発電所用特殊バルブのメーカーで、ビルをマスターリースして新しい東京オフィスにしつつ、建物全体を「S-TOKYO」と名付けた小規模文化施設としてセンブンノイチと共に企画・運営する。
通りから目印となる看板。S-TOKYOの「S」はSocial、Salon、Shareなどが由来で、いずれも人・街が繋がるような想いが込められている。
センブンノイチではこのS-TOKYOの内装デザインやブランディングを手掛けた。
1階、カフェ「S-TOKYO SOCIAL STAND」。
駐車場だったスペースを、近隣で働くひとやこのビルで仕事をするひとが気軽に休憩したり、新しい出会いが生まれるようなカフェにコンバージョンした。
キッチンの壁には外装タイルのカラーを取り入れグリーンのタイルを貼り、向かいの客席側の壁は空間を引き締めるようネイビーで塗装した。
日中はコーヒースタンド、夜はシェアバーにもなる。「この場所を訪れる方に思慮の時間や新たな気付きを提供するソーシャルスタンドです。今後は日替りマスター・ママを中心としたユニークなコミュニティの場も提供していきたい」と間宮さん。
カフェ横のエントランスから上階へ。
まずはエレベーターで6階まで上がってみる。
6階、岡野バルブ製造オフィス。中央に生き生きとした植物プランターを置きそれを囲むようにワークスペースを配した。
S-TOKYOのはす向かいにある生花店による演出で、早速地域との繋がりが生まれた。
働くスタッフからは「生木があると空気が違う。」と好評だそうだ。
岡野バルブ製造は原子力や火力発電所などの高温高圧バルブを開発製造するリーディングカンパニーで、例えばこのようなこのようなものを造るそうだ。(Photo: 岡野バルブ製造)
S-TOKYO内の各所にそれらを構成するパーツの木型がオブジェとして置かれている。原子力発電所のような高気密・高精度が求められる施設では、各部のパーツはほとんどワンメイクで、このように職人が手作りした超高精な木型を元に鋳型を製作していく。
工場には大小の様々な形の木型が大量にストックされていて、数年を経て不要になると廃棄されるそうだ。センブンノイチのスタッフは、工場を訪れた際それらの唯一無二のフォルムと温かみのある表情に魅了され、使われなくなったものをS-TOKYOに運んでオブジェやキャッシュトレー、ディスプレーなどとして利用している。
階段室。ビンテージビルではこのようにユニークな造形の階段室が少なくない。
5階、1/千(センブンノイチ)オフィス。
左から間宮晨一千さん 、村山一美さん、林要次さん共同代表の3名は芝浦工業大学繋がり。愛知のオフィスと、ここ東京オフィスを拠点に様々なプロジェクトに取り組んでいる。
4階、シェア会議室「東京探題」。3階のシェアオフィス利用者が使用できる会議室で、1人用、4人用、8人用の室が並ぶ。
こちらは8人用。
3階、シェアオフィス「東京探題」。岡野バルブ製造はDX事業を推進すべく、各地のローカルプレーヤーにここを東京の拠点にしてもらい、何か新しいコトやモノが生まれる場として醸成していきたいそうだ。
老若男女、バックグラウンドも多様な人々が集まることを想定し、ニュートラルな雰囲気に仕上げた。コンパクトな空間ながら、性格の異なる3種類の居場所を配している。椅子とポスト以外の家具はオリジナルの造作だ。
2階、サロン/ショーケース。ギャラリーや、新製品の発表会、或いは未来に向けた議論を行うサロンとして様々に使えるフリースペース。訪問時はS-TOKYOのロゴマークやサインなどのグラフィックを担当した武村彩加さんの個展が開催されていた。
左から間宮晨一千さん、村山一美さん、林要次さん。
「ここは、未来を模索する企業が集まる共創空間であり、日々多様な人が議論を重ねる客間、新たな表現を発信するギャラリー、そして日本橋を散策するとまり木となる場所でもある、多様な要素を兼ね備えた小規模文化施設 (マイクロコンプレックス)です。『ローカル&ローカル⇔トウキョウ』をテーマに、地方と首都圏のユニークな企業・プレイヤーの活動拠点となり、相互作用を生みながら新たな事づくりを行う場所としていけたらと思います。」と間宮さん。