杭とトンガリ

Fuminori Nosaku, Mio Tsuneyama
26. 4月 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
敷地は渋谷区西原、京王線幡ヶ谷駅から延びる商店街の一角にできた一棟貸しのテナントだ。
既存の木造店舗の建て替えで、施主からは「木造の建物は30年サイクルで壊されてしまうから、解体のことも考えてほしい。」と依頼され、それであれば「リサイクル可能な素材で建築を建てたらどうか。」と能作さんは提案した。
間口わずか1間半。店舗としての求心性を持たせた、トンガリ屋根が愛らしい姿。
建物の足下を見とコンクリートの基礎がなく高床になっているのが見える。
コンクリートの基礎を打ってしまうと、リサイクルするとしても砕石くらいにしかならいので、まずコンクリート基礎を疑ってみることから始めた。
地盤が緩いため柱状改良が必要であったが、ここでコンクリートを流し混んでは意味がないので、掘削坑に砂利を入れ込んだ改良を施した上で、H型鋼を布基礎のように寝かして置く方向で設計を進めていた。しかし敷地が狭く柱状改良用の重機が入れないないことが判明。杭基礎を打つ機械なら何とか入れるということで、写真のようにリサイクルできる鋼管の杭基礎を14mねじ込むこととした。
土が露出した床下が懐かしい。φ140mmの鋼管杭8本の上に金具を溶接し、金具と木造建物の土台が固定されてる。
地面から突き出しているのは排水溝の受け。
今回の建築の一番のテーマは、アスファルトやコンクリートで固められた都市の地面を剥がし土を露出させ、土に水や空気を浸透させることで微生物や有機物が循環する土中環境を取り戻すこと。そのために高田造園設計より学んだ方法を実践している。

雨は樋で受けず敷地外周に敷設した雨落ちに落とす。雨落ちは深さ30cm程の溝を掘り、割竹で土留めをする。そこに深さ1m程の縦穴を掘り、節抜きの竹と小枝を1.5m間隔で打ち込む。溝には竹炭や落ち葉を敷き詰め、その上に砕石を被せる。これにより土中に水と空気が回り、やがて埋設した竹や小枝は分解され有機物によって元気な土になっていく、ということだ。
ちょうど隣地と対照的な状況が並ぶ。ほんのわずかな前庭だが、土があれば植物が植えられる。
ちなみに地面にあるリンゴは、取材時開催されていた展覧会のインスタレーション。
30cm持ち上げた床が強調されるようにステップはキャンティレバーで建物側に付く。
建物内は店舗テナントということもあり、構造用合板現しのスケルトン状態だ。
SD Review 2022でも展示されていた模型や図面、写真が展示。
2階への階段は、奥に設置すればファサードに大きな開口を設けられるが、階段までの動線が必要になってしまうので、表側に設置した。
表側に設置すると今度は外光が入りにくくなるので、一度低い位置で踊り場を設け、外光が入りやすく工夫した。
踊り場は日当たりの良いバルコニーのようだ。
2階ではトンガリ屋根が際立つ。北側及び道路斜線を避けながらできるだけ天井高さを確保した。
また商業テナントとしても、特徴的な外観とすることにも一役買っている。
そして天井に排煙設備でもある開閉可能なトップライトが2つ設けられ、金属ルーバーに反射しながら柔らかな光が差し込むようにしてある。
ファサード側では、通りから開口がキャッチーに見えるよう、開口の比率やブレースの見え方を調整。
階段室の壁はモイスで仕上げ、天井もラーチままではなく仕上げることで、設計者としての意匠性を確保すると共に、借り手の内装工事の負担を減らすことにも貢献している。
取材時「centre project」というグループ展が開催されていて、この建築の考え方や姿に対して呼応するよう、各作家が自身で解釈した作品が小さな建築に散りばめられている。出展作家は青柳菜摘、多田恋一朗、田中義久、Nerhol、山田悠太朗、楊博。
左から能作文徳さん、展示作品を出展した山田悠太朗さんと田中義久さん。
平面図(©能作文徳建築設計事務所)
断面図(©能作文徳建築設計事務所)
【杭とトンガリ】
設計・監理:能作文徳建築設計事務所/能作文徳、水上俊也、土屋瑛衣子+mnm/常山未央
構造設計:オーノJAPAN
施工:工藤工務店

用途:店舗
構造規模:木造、地上2階
敷地面積:33.15 ㎡
建築面積:21.80 ㎡
延床面積:43.48 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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