東急歌舞伎町タワー

Yuko Nagayama, Kume Sekkei
10. 4月 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
個性的な建ち姿で建設中から注目を集めていた地上48階、地下5階の商業ビルで、“好きを極める”場の創出がコンセプト。

・39F-47F、ホテル「BELLUSTAR TOKYO」
・18F-38F、ホテル「HOTEL GROOVE SHINJUKU」
・17F、「JAM17」
・9F-10F、映画館「109シネマズプレミアム新宿」
・6F-8F、劇場「THEATER MILANO-Za」
・5F、ウェルネスエンターテインメント施設「EXSTION」
・4F、ダンジョン攻略体験施設「THE TOKYO MATRIX」
・3F、アミューズメントコンプレックス「namco TOKYO」
・2F、エンターテインメントフードホール「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」
・1F、レストラン・カフェ、バスターミナル
・B1F-B4F、ライブホール「Zepp Shinjuku」,「ZEROTOKYO」

というフロア構成でお気づきになるだろうが、エンターテインメントに特化し、これだけの超高層でありながらオフィステナントがない非常に希な複合ビルとなる。
建築設計は久米設計、外装デザイン担当として指名コンペで永山事務所が選ばれたが、このビルで求められたのは歌舞伎町のイメージを変えるような、エンターテインメント性のある、人目を引く華やかさだった。
かつて歌舞伎町にあった噴水をオマージュしつつ、さらに以前、戦後の意気消沈した国民を元気づけるため、娯楽を呼び込み活気を取り戻そうとした人々の思いなど、歴史的なコンテクストを丁寧にすくい上げ、活気や賑やかさが湧き上がる、巨大な噴水のイメージでデザインされた。
ガラスは折板のような波形に嵌められており、見る角度によってキラキラと反射する。
水の飛沫を表現した大きめドットによるグラデーションと、下側の窓でより淡グラデーションのアーチも細かなドットがプリントされているのだが、屋外側(第1面)に耐候性のあるセラミックプリントを施した。
屋外側にプリントできたことで、写真のようにガラスに光が反射してもグラデーションが見えているのが分かる。
淡いグラデーション部の拡大。伝統的な青海波文様をアレンジした。
グラフィックデザイナーには依頼せず全て永山事務所でパターンをデザインし、240版全て内製したそうだ。
これだけ細かな模様でグラーデーションを表現したのは「ホテルの客室から人が見た際、優しく見えるように解像度を上げた。」と永山さん。
低層部はかつての新宿TOKYU MILANOの建物高さ。
また歌舞伎町では数少ない街路樹で周りが囲まれているが、これはビル風の影響を抑制するためだ。
低層部を近くで見ると、こちらも青海波文様をアレンジしたアルミの鋳物で仕上げられている。
これも同様に湧き上がる噴水のイメージと、カラーリングはかつてのミラノ座の赤茶色をオマージュしている。さらに上にいくに従って白っぽくグラデーションしている。
日が暮れるとライティングにより表情を変える。
歌舞伎町繁華街内側のシネシティ広場から。
1998年まで噴水はこの広場にあった。その奥に新宿TOKYU MILANOが建っており、「ミラノ座」や「ミラノボウル」などが入るエンタメ施設であった。
大型ディスプレーが設置された正面エントランス。広場の雰囲気はかなり変化するだろう。
正面エントランスはステージにもなる大階段と、エスカレーターで2階へ上がれる。
2階へ上がり見返すと東宝のゴジラと目が合う。
階段ステージや、大型ディスプレーと連動し、シネシティ広場と一体となったイベントで賑わいを創出する。
2階がエンタメ施設へのエントランスとなり、フードホール「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」が広がり、ここから劇場や映画館などへもアクセスすることが出来る。
エンターテインメントフードホール「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」。デザインは乃村工藝社。
グランドレベルからはホテルとバスターミナルへ。
ホテルはラグジュアリーホテルの「BELLUSTAR TOKYO」と、エンターテインメントホテル「HOTEL GROOVE SHINJUKU」の二つのブランドからなる。
1階エントランスフロアも永山事務所によるデザイン。天井は特注のパネルで波をイメージしたデザイン。
右はホテルのエントランスと、羽田空港や成田空港直通のバスが発着するバスターミナル、地下駐車場への動線ともなる。観光案内所もある。
永山さんが多くのプロジェクトで採用するヘリンボーン柄の壁で空間の密度が上がっている。
エントランス横のラウンジバー。チェーンメッシュが滝のようだ。
「BELLUSTAR TOKYO」利用の場合、ここでウェルカムドリンクなども提供される予定。
本施設では「新宿・歌舞伎町の歴史を紡ぐアートプロジェクト」と題し、26名の作家によるアート作品が各所に設置されている。
こちらは17階「JAM17」「HOTEL GROOVE SHINJUKU」への直通エレベーター。
39階の「BELLUSTAR TOKYO」へは別のエレベーターを利用する。
さらに別のエンタメ用のエレベーターで6階へ。
ライブエンターテインメントシアター「THEATER MILANO-Za」のホワイエやシアターホールの外周は永山事務所が担当。
床全面がアート作品で、巨大な手が描かれているので訪れた際見て頂きたい。
ホワイエの奥には「Za Bar」
西新宿の高層ビル群を眺めながら観劇前の一杯を楽しむことができる。
シアターホールは久米設計が担当した。
900席あり、演劇、ミュージカル、音楽ライブ、映像イベント等様々な演目に対応できる。
7階、シアター2階席のホワイエ。
統一テーマである噴水、或いは滝や氷柱にも見える、二層吹き抜けの大迫力の壁面装飾。
演目によって照明の色は自由に変えられる。
一番手前のものはパイプだが、ほかはオリジナルのアーチ形断面のアルミ押し出し材を組み合わせてある。永山事務所で初めてトライした素材。
永山祐子さん。
「歌舞伎町を新しい雰囲気に変えられるようなデザインを目指しました。遠くから見ると西新宿のビル群とは離れ独立して建っているので、完成後の見え方はとても心配でした。しかし建ち上がった姿は想像以上に美しく、細かな注文にも関わらず対応してくださった皆さんには本当に感謝しています。」
その他の永山事務所担当外のエリアも一部紹介したい。こちらは17階のレストラン、バー、パーティールームの複合フロア「JAM17」のテラス。
JAM17 BAR。西野達によるアートがアクセントになっている。
HOTEL GROOVE SHINJUKUの一室、Premier Suite Twin
18階 ロビー
このフロアの窓からは、ファサードの裏側をよく観察することができる。
BELLUSTAR TOKYOの一室、Studio Premier King
45階 Bar Bellustar。厳選した農園から仕入れるフルーツ、野菜やハーブ、日本の風土が育むクラフトリカーと世界中の美酒を提供する。天井から吊られた金属の球体アートは大巻伸嗣による作品。LEDが点滅して壁や天井に水紋や花などのモチーフが影絵のように映し出される。
3階「Namco TOKYO」から吹き抜け見下ろし。
B1〜B4にあるZepp Shinjuku (TOKYO) 
東京都内のZeppホールとしては3館目。
収容人数は1,500人。臨場感あふれる音楽体験を提供する。
歌舞伎町タワーのブランドロゴ。デザインエレメントとしてピアノの鍵盤や音響機器のイコライザーといったエンターテインメント性を想起させる要素に加え、本施設の外観のモチーフである噴水の要素を内包している。国内外含むツーリストの目的地となり、歌舞伎町エリアのさらなる賑わい創出に寄与していきたいという願いが込められている。
【東急歌舞伎町タワー】
Tokyu Kabukicho Tower
事業主体:東急株式会社、株式会社東急レクリエーション
建築設計:久米設計・東急建設コンサルタント設計JV
外装デザイン:永山祐子建築設計
企画・プロデュース:株式会社POD
施工:清水・東急建設JV
用途:ホテル、劇場、映画館、店舗、駐車場など
敷地面積:4,603.74m²
建築面積:約3,600m²
延床面積:約87,400m²
所在地:東京都新宿区歌舞伎町1-29-1
公式HP:www.tokyu-kabukicho-tower.jp

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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