「建築倉庫ミュージアム」詳細レポート

Neoplus Sixten Inc.
16. 6月 2016
Photo by Neoplus Sixten Inc.

寺田倉庫は1950年創業の、天王洲を中心に保存保管業を展開している会社。ワイン、美術品、映像資料など様々なジャンルの保存保管技術を保持しており、今回新たに"建築模型"が加わったかたちだ。模型を収納するスペースが足りないという都心の建築家たちの要望に応えて、預けるだけでなく「展示しながら保存するミュージアム」というコンセプトのもと誕生した。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

エントランス。自社デザインしたインテリアで、高さ3.6mほどもある木製扉は倉庫としての機能も持っているため、大型模型の搬出入も可能だ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

レセプション。

ちょうど隈研吾建築都市設計事務所の海外から戻ってきた梱包箱が実験的にディスプレイされていた(オープン時は変わっている可能性有り)

Photo by Neoplus Sixten Inc.

陳列室。約450m2、天井高5.2mの大空間に約100のラックが並び、現在は約20組の設計事務所による建築模型やモックアップが展示されている。館長自ら、オファーした建築家と対話を重ねながら選定した模型が収蔵されている。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

ラック1ユニットは、幅1500mm、奥行き750mm、高さ3800mmが基本サイズ。幅・奥行きがこれに収まらない大きな模型に合わせてサイズが異なる場合もある。模型のサイズにもよるが全体のキャパシティは500点ほど。
 

陳列室は美術品と同等の温度・湿度で保管されているが様子を見ながら微調整していくそうだ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

海外の美術館では、そのクオリティの高さから日本の建築模型をコレクションに加えようと買い付けが盛んで、次々と海外へ流出しているという。
日本ではそもそも収蔵品になるという概念がほとんどなく、保管スペースの問題から廃棄されることが多い。本施設はそのような憂慮すべき状況を打破すべく、「日本の建築文化と質」を価値ある資料として捉え直し、後世に残すための “正倉院” になることを目指している。
羽田空港から電車で30分足らずという立地のよさから、すでに海外からのツアー訪問先としてオファーが多くきているという。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

オープン時はこのような雰囲気になる。館内照明は各ラックに設えたスポットライトのみで、正に美術品を鑑賞するような趣向だ。各ラックには出展者名とQRコードを記載したパネルが設置され、模型作品の竣工写真や図面、出展者のプロフィールなどの情報が日英バイリンガルで表示される。これら情報の蓄積はナレッジとして将来的に教育機関などと連携したシステムになることを想定している。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

建築家がよく"梱包箱からプレゼンが始まる"と言う通り、そこには各建築家の個性が表れてくるため梱包箱も展示の一部だ。コンペに出すために制作したと思われる箱や、海外の展覧会に出展したと思われる箱など、梱包箱を通じてバックヤードを垣間見るようなリアリティを味わうことができる。

実際今後も必要に応じて事務所所員がここに模型を取りに来て持ち出したり、要請によってミュージアム側から発送手配もする予定だそうだ。

現在収蔵さている模型の一部を紹介。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈飯山市文化交流館 なちゅら〉 隈研吾建築都市設計事務所

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈中国美術学院民芸博物館〉 隈研吾建築都市設計事務所
 

恐らく日本一模型の多い建築事務所である隈事務所の模型が一番多く収蔵され、隈事務所自体も積極的に本館を活用しているのが伺える。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

坂茂建築設計のラック

Photo by Neoplus Sixten Inc.

木造躯体のスタディ

Photo by Neoplus Sixten Inc.
Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈ザ・サークル〉 チューリッヒ空港に建設中で2020年竣工予定

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館〉 
CAt/シーラカンス アンド アソシエイツ

Photo by Neoplus Sixten Inc.

言わずと知れた2016年の日本建築学会賞作品で、学会での展示後ここに収蔵されている。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

模型のベースにはQRコードが刻印されていた。試しにスマホをかざすと、事務所のHP、英語の文字情報、実際の建物のドローン空撮動画が表示される(この画像からもスキャン可能)

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈釜石市立鵜住居地区学校等〉 CAt/シーラカンス アンド アソシエイツ

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈釜石市唐丹地区学校等建設工事設計業務委託プロポーザル〉 
千葉学建築計画事務所

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 古市徹雄都市建築研究所のラック

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈中村キース・へリング美術館〉 北川原温建築都市研究所

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マウントフジアーキテクツスタジオ+芝浦工業大学建築学科原田真宏研究室

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青木淳建築計画事務所
 

大型模型ばかりではなくこのようなスタディ模型や、ファサードの検討模型なども貴重な資料だ。

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阿部仁史アトリエ
 

地元の事務所に十分な収納スペースがあるにもかかわらず模型の提供を申し出てくれた。

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 田井幹夫/アーキテクトカフェ

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈聖イグナチオ教会〉 香山壽夫建築研究所
 

竣工には至らなかった幻の作品に出会うこともできる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

ギャラリーコーナー。
企画展などのほか月一回程度セミナーを行う予定。出展建築家が大学の講義の場所として使うこともできる。
現在は、2014年ポーラミュージアムで開催されたワンダーウォール(片山正通)の個展で展示されていた模型が陳列されている(見逃した方はこの機会にぜひ)。

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 〈A-FACTORY〉

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈UNIQLO New York Fifth Avenue〉

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別室の〈修復室〉。
 

寺田倉庫のインハウス模型チームや、出展建築事務所の所員が搬出入時等に修復を行うスペースではあるが、書籍や物販コーナーなども設置されるミュージアムショップ的な役割や、来場者が自由に閲覧できる図書、模型修復の様子の見学、模型製作ワークショップ等を予定しており、9月末のオープンを目指す。

この日も搬入されたばかりで修復を待つ模型がいくつかあった。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 修復室の模型。修復グッズが壁面にディスプレイされるなど楽しい空間になりそうだ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

建築倉庫館長の徳永雄太さん。
 

「建築模型こそクールジャパンだと思っています。海外の文化機関と連携して、これら模型を中心とした日本人建築家の展示を世界各地で行うなど、日本の建築文化を普及するさまざまな事業を展開していく予定です。本施設を拠点に、模型が世界中をまわっては戻ってくるというようなサイクルが生まれる日が楽しみです。」

「このような施設は今まで必要だったにもかかわらずなかったものです。ここを寺田倉庫はビジネスとしては捉えず、0だったものを1にして、ものごとを動かす切っ掛け作りとして働きかけています。とてもエネルギーが必要なことですので皆さんのご協力と意識により醸成していけたらと思っています。」


 

【建築倉庫ミュージアム ARCHI-DEPOT】
オープン:2016年6月18日
詳細:archi-depot.com

出展団体:青木淳建築計画事務所、阿部仁史アトリエ、北川原温建築都市研究所、隈研吾建築都市設計事務所、クライン ダイサム アーキテクツ、香山壽夫建築研究所、SANDWICH、シーラカンス アンド アソシエイツ、千葉学建築計画事務所、トラフ建築設計事務所、株式会社日建設計、坂茂建築設計、古市徹雄都市建築研究所、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO + 芝浦工業大学建築学科原田真宏研究室、山本理顕設計工場、Wonderwall (R)など


 

ミュージアム見学の後、徳永さんより天王洲エリアの楽しみ方も案内していただいた。

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〈寺田倉庫本社〉

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 本社ロビー。こちらは社内デザイン。

Photo by Neoplus Sixten Inc.
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〈ピグモン(PIGMENT)〉 隈研吾建築都市設計事務所
 

希少な画材を揃える画材ラボ。建築倉庫ミュージアム(本社ビル)の隣にある。普段から開催されているワークショップに、"模型づくり"を入れるなどコラボレーションを検討しているという。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 壁面には4200色の岩絵具

Photo by Neoplus Sixten Inc.

そして筆、刷毛、硯、墨、膠(にかわ)など、商品やミュージアムとしてのコレクションが並ぶ。海外からの観光客にも人気で、特に岩絵具を買って帰る方が多いそうだ。

【ピグモン(PIGMENT)】
詳細:https://pigment.tokyo/

寺田倉庫は1950年創業の、天王洲を中心に保存保管業を展開している会社。ワイン、美術品、映像資料など様々なジャンルの保存保管技術を保持しており、今回新たに"建築模型"が加わったかたちだ。模型を収納するスペースが足りないという都心の建築家たちの要望に応えて、預けるだけでなく「展示しながら保存するミュージアム」というコンセプトのもと誕生した。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

エントランス。自社デザインしたインテリアで、高さ3.6mほどもある木製扉は倉庫としての機能も持っているため、大型模型の搬出入も可能だ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

レセプション。

ちょうど隈研吾建築都市設計事務所の海外から戻ってきた梱包箱が実験的にディスプレイされていた(オープン時は変わっている可能性有り)

Photo by Neoplus Sixten Inc.

陳列室。約450m2、天井高5.2mの大空間に約100のラックが並び、現在は約20組の設計事務所による建築模型やモックアップが展示されている。館長自ら、オファーした建築家と対話を重ねながら選定した模型が収蔵されている。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

ラック1ユニットは、幅1500mm、奥行き750mm、高さ3800mmが基本サイズ。幅・奥行きがこれに収まらない大きな模型に合わせてサイズが異なる場合もある。模型のサイズにもよるが全体のキャパシティは500点ほど。
 

陳列室は美術品と同等の温度・湿度で保管されているが様子を見ながら微調整していくそうだ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

海外の美術館では、そのクオリティの高さから日本の建築模型をコレクションに加えようと買い付けが盛んで、次々と海外へ流出しているという。
日本ではそもそも収蔵品になるという概念がほとんどなく、保管スペースの問題から廃棄されることが多い。本施設はそのような憂慮すべき状況を打破すべく、「日本の建築文化と質」を価値ある資料として捉え直し、後世に残すための “正倉院” になることを目指している。
羽田空港から電車で30分足らずという立地のよさから、すでに海外からのツアー訪問先としてオファーが多くきているという。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

オープン時はこのような雰囲気になる。館内照明は各ラックに設えたスポットライトのみで、正に美術品を鑑賞するような趣向だ。各ラックには出展者名とQRコードを記載したパネルが設置され、模型作品の竣工写真や図面、出展者のプロフィールなどの情報が日英バイリンガルで表示される。これら情報の蓄積はナレッジとして将来的に教育機関などと連携したシステムになることを想定している。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

建築家がよく"梱包箱からプレゼンが始まる"と言う通り、そこには各建築家の個性が表れてくるため梱包箱も展示の一部だ。コンペに出すために制作したと思われる箱や、海外の展覧会に出展したと思われる箱など、梱包箱を通じてバックヤードを垣間見るようなリアリティを味わうことができる。

実際今後も必要に応じて事務所所員がここに模型を取りに来て持ち出したり、要請によってミュージアム側から発送手配もする予定だそうだ。

現在収蔵さている模型の一部を紹介。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈飯山市文化交流館 なちゅら〉 隈研吾建築都市設計事務所

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈中国美術学院民芸博物館〉 隈研吾建築都市設計事務所
 

恐らく日本一模型の多い建築事務所である隈事務所の模型が一番多く収蔵され、隈事務所自体も積極的に本館を活用しているのが伺える。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

坂茂建築設計のラック

Photo by Neoplus Sixten Inc.

木造躯体のスタディ

Photo by Neoplus Sixten Inc.
Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈ザ・サークル〉 チューリッヒ空港に建設中で2020年竣工予定

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館〉 
CAt/シーラカンス アンド アソシエイツ

Photo by Neoplus Sixten Inc.

言わずと知れた2016年の日本建築学会賞作品で、学会での展示後ここに収蔵されている。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

模型のベースにはQRコードが刻印されていた。試しにスマホをかざすと、事務所のHP、英語の文字情報、実際の建物のドローン空撮動画が表示される(この画像からもスキャン可能)

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈釜石市立鵜住居地区学校等〉 CAt/シーラカンス アンド アソシエイツ

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈釜石市唐丹地区学校等建設工事設計業務委託プロポーザル〉 
千葉学建築計画事務所

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 古市徹雄都市建築研究所のラック

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈中村キース・へリング美術館〉 北川原温建築都市研究所

Photo by Neoplus Sixten Inc.

マウントフジアーキテクツスタジオ+芝浦工業大学建築学科原田真宏研究室

Photo by Neoplus Sixten Inc.

青木淳建築計画事務所
 

大型模型ばかりではなくこのようなスタディ模型や、ファサードの検討模型なども貴重な資料だ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

阿部仁史アトリエ
 

地元の事務所に十分な収納スペースがあるにもかかわらず模型の提供を申し出てくれた。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 田井幹夫/アーキテクトカフェ

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈聖イグナチオ教会〉 香山壽夫建築研究所
 

竣工には至らなかった幻の作品に出会うこともできる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

ギャラリーコーナー。
企画展などのほか月一回程度セミナーを行う予定。出展建築家が大学の講義の場所として使うこともできる。
現在は、2014年ポーラミュージアムで開催されたワンダーウォール(片山正通)の個展で展示されていた模型が陳列されている(見逃した方はこの機会にぜひ)。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈A-FACTORY〉

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈UNIQLO New York Fifth Avenue〉

Photo by Neoplus Sixten Inc.

別室の〈修復室〉。
 

寺田倉庫のインハウス模型チームや、出展建築事務所の所員が搬出入時等に修復を行うスペースではあるが、書籍や物販コーナーなども設置されるミュージアムショップ的な役割や、来場者が自由に閲覧できる図書、模型修復の様子の見学、模型製作ワークショップ等を予定しており、9月末のオープンを目指す。

この日も搬入されたばかりで修復を待つ模型がいくつかあった。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 修復室の模型。修復グッズが壁面にディスプレイされるなど楽しい空間になりそうだ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

建築倉庫館長の徳永雄太さん。
 

「建築模型こそクールジャパンだと思っています。海外の文化機関と連携して、これら模型を中心とした日本人建築家の展示を世界各地で行うなど、日本の建築文化を普及するさまざまな事業を展開していく予定です。本施設を拠点に、模型が世界中をまわっては戻ってくるというようなサイクルが生まれる日が楽しみです。」

「このような施設は今まで必要だったにもかかわらずなかったものです。ここを寺田倉庫はビジネスとしては捉えず、0だったものを1にして、ものごとを動かす切っ掛け作りとして働きかけています。とてもエネルギーが必要なことですので皆さんのご協力と意識により醸成していけたらと思っています。」


 

【建築倉庫ミュージアム ARCHI-DEPOT】
オープン:2016年6月18日
詳細:archi-depot.com

出展団体:青木淳建築計画事務所、阿部仁史アトリエ、北川原温建築都市研究所、隈研吾建築都市設計事務所、クライン ダイサム アーキテクツ、香山壽夫建築研究所、SANDWICH、シーラカンス アンド アソシエイツ、千葉学建築計画事務所、トラフ建築設計事務所、株式会社日建設計、坂茂建築設計、古市徹雄都市建築研究所、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO + 芝浦工業大学建築学科原田真宏研究室、山本理顕設計工場、Wonderwall (R)など


 

ミュージアム見学の後、徳永さんより天王洲エリアの楽しみ方も案内していただいた。

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〈寺田倉庫本社〉

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 本社ロビー。こちらは社内デザイン。

Photo by Neoplus Sixten Inc.
Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈ピグモン(PIGMENT)〉 隈研吾建築都市設計事務所
 

希少な画材を揃える画材ラボ。建築倉庫ミュージアム(本社ビル)の隣にある。普段から開催されているワークショップに、"模型づくり"を入れるなどコラボレーションを検討しているという。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 壁面には4200色の岩絵具

Photo by Neoplus Sixten Inc.

そして筆、刷毛、硯、墨、膠(にかわ)など、商品やミュージアムとしてのコレクションが並ぶ。海外からの観光客にも人気で、特に岩絵具を買って帰る方が多いそうだ。

【ピグモン(PIGMENT)】
詳細:https://pigment.tokyo/

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