「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展 レポート

Neoplus Sixten Inc.
20. 7月 2017
Photo by Neoplus Sixten Inc.

本展は、日本の住宅建築を成立させる条件が大きく変わった戦後に焦点をあて、56組の日本の建築家が設計した住宅75件の家を、《日本的なるもの》《遊戯性》《脱市場主義》など13のテーマ(系譜)に分け、模型、図面、写真、映像など400点を超す資料で紹介する。ローマ(2016年11月)、ロンドン(2017年3月)巡回を経て開催される東京では、新たに体験型の模型や施主のインタビュー映像などが追加されている。

《1. 日本的なるもの》

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戦後間もない頃に、日本の家の起源などないという境地に立った上で「日本的なるもの」を相対化するために様々な知恵を持ち込んだ傑作を紹介。

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生田勉〈栗の木のある家 1956〉

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白井晟一〈芦屋山本邸のためのスケッチ〉

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丹下健三 〈自邸 1953〉

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清家清〈斎藤助教授の家 1952〉原寸大模型。
東京都大田区(現存せず)/木造/延床面積71㎡/敷地面積795㎡
家の一部がキャンティレバーになっている(宙に浮いている)のは、傾斜敷地にローコストで建てるという必要性から、既存の基礎を用いた結果。基礎の一部はテラスとしも使われていて、その結果、部屋→縁側→簀の子→テラス→庭という空間のグラデーションが生まれている。

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来場者は靴を脱いで中に入ることができる。

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《2. プロトタイプと大量生産》

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難波和彦〈箱の家〉シリーズや、池辺陽〈住宅No.3〉前川國男〈PREMOS〉の映像など。

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黒川紀章〈中銀カプセルタワービル 1972〉

《3. 土のようなコンクリート》

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吉阪隆正〈吉阪自邸 1955〉

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東孝光〈塔の家(自邸)1966〉

《4. 住宅は芸術である》

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「住宅は芸術である」とは篠原一男の言葉。生活空間に斜めの柱が突き出している〈上原通りの家〉展示エリアでは、実際に住まい手がどう受け止めているかが分かるインタビュー映像を観ることができる。

《5 閉鎖から開放へ》

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1970年初頭から1980年代半ばにかけて、伊東豊雄と坂本一成が家の表現をスピーディーかつ大胆に展開させた様相を紹介。

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坂本一成〈水無瀬の町家 1970〉


《6. 遊戯性》

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柄沢祐輔〈s-house 2013〉

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毛綱毅曠〈反住器 1972〉

《7. 新しい土着:暮らしのエコロジー》

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暮らしと周囲の環境とが調和している"生き生きとした空間”。人々の暮らしの中で培われてきた様々な知恵と家とが調和的な関係にあるときに家=エコロジカルとなる。

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五十嵐淳〈光の短形 2007〉

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アトリエ・ワン〈ポニー・ガーデン 2008〉

《8 家族を批評する》

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家のデザインを通じて新しい家族のあり方を世に問う建築家たち。

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菊竹清訓〈スカイハウス 1958〉

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石山修武〈世田谷村(自邸)1997-〉

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西田司+中川エリカ〈ヨコハマアパートメント 2009〉

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生物建築舎〈天神山のアトリエ 2011〉

《9 脱市場経済》
「家とは何か?」を真摯に考えれば出てくる「本来自分で建てるもの」という回答の実践の一形態。

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岡啓輔〈蟻鱒鳶ル 2005-〉
地下1階地上4階(予定)の住宅。設計、資材の手配、足場づくり、配筋、型枠、コンクリート打設まですべての作業を、岡がほぼひとりで行い自邸を建てている。

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宮本佳明〈「ゼンカイ」ハウス 1997〉

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石山修武〈開拓者の家 1986〉

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津村耕祐〈FINAL HOME 1994-〉
ファッションデザインという別ジャンルから「家」に対して投げかけられた重要な提言を展示。新聞紙をポケットに入れれば防寒着になり、非常食や医療キットを入れれば非常着になる「究極の家」。

《10 さまざまな軽さ》
日本の現代建築が建築の歴史に対してなした最大の貢献は「軽さ」を積極的な価値として認めさせたこと。計測可能な重さとしての軽さだけでなく、意味としての軽さも然り。

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島田陽〈六甲の住居 2011〉隈研吾+篠原聡子〈伊豆の風呂小屋 1988〉など


《11. 感覚的な空間》
1970年代、「感覚的」という曖昧な表現であえて呼びたくなる空間を持つ家が登場。その特徴は空気や流動性を感じ取れること。2000年代以降の「感覚的な空間」では、都市との積極的なつながりが考慮されるように。

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伊東豊雄〈中野本町の家 1976〉妹島和世〈梅林の家 2003〉大西麻貴+百田有希〈二重螺旋の家 2011〉など

《12 町家:まちをつくる家》
町家が立ち並ぶと、統一感のある見事な街並みが生まれる。町家を再解釈することで、都市に住むというライフスタイルが持つ意味を考え直すことができる。

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安藤忠雄〈住吉の長屋〉岸和郎〈日本橋の家〉など。

《13 すきまの再構築》

郊外から都心へ。小さな敷地に建てると生まれる「すき間」を肯定的に捉え直した住宅の例。

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藤本壮介〈House NA 2011〉
そのほか西沢立衛〈森山邸 2005〉西沢大良〈大田のハウス 1998〉など。

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〈プチプチ・ガーデン〉津村耕祐
エントランスロビーでは、衝撃を吸収する「プチプチ」を使ったパズルパーツ、プチプチタングルを繋げて様々なものを工作するワークコーナー「プチプチ・ガーデン」が設置されている。ワークショップなども開催される予定。

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開会の挨拶をする伊東豊雄氏。「これからどのような家がありえるのかという問いがこの展覧会の大きなテーマではないかと思います。それから個人的な感想を言わせていただくと、東工大の結びつきを感じますね。」

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本展チーフ・アドバイザーの塚本由晴氏。「日本の建築家は家という小さな建築を通じて社会課題を解決に導く回答や新たな生活様式を提案してきました。世界的にも注目されている『日本の家』を系譜という観点から分析し紹介することで、未来の家を考える手がかりになればと思います。」

出品建築家一覧
相田武文、青木淳、東孝光、アトリエ・ワン(塚本由晴+貝島桃代)、阿部勤、安藤忠雄、五十嵐淳、生物建築舎(藤野高志)、生田勉、池辺陽、石山修武、伊東豊雄、乾久美子、o+h(大西麻貴+百田有希)、大野勝彦+積水化学工業、岡啓輔、柄沢祐輔、菊竹清訓、岸和郎、隈研吾、黒川紀章、黒沢隆、金野千恵、坂倉準三、坂本一成、篠原一男、篠原聡子、島田陽、白井晟一、清家清、妹島和世、丹下健三、手塚建築研究所(手塚貴晴+手塚由比)、dot architects(家成俊勝+赤代武志)、中川エリカ、中山英之、難波和彦、西沢大良、西沢立衛、西田司、長谷川逸子、長谷川豪、広瀬鎌二、藤井博巳、藤本壮介、藤森照信、前川國男、増沢洵、宮本佳明、無印良品、毛綱毅曠、山下和正、山本理顕、吉阪隆正、吉村順三、アントニン・レーモンド

【日本の家 1945年以降の建築と暮らし】
The Japanese House: Architecture and Life after 1945
会期:2017年7月19日~10月29日
会場:東京国立近代美術館1F 企画展ギャラリー
詳細:www.momat.go.jp

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