Naoki Hashimoto Exhibition
橋本尚樹展「before the beginning –はじまりのけはい–」
Naoki Hashimoto | 14. 11月 2024
All photos by Neoplus Sixten Inc.
橋本尚樹 (NHA) 初の個展をレポート。2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオン、福岡伸一プロデュースの「いのち動的平衡館」を中心に紹介。橋本尚樹が未来に向けて挑戦した建築。
2024年11月2日〜12月14日/プリズミックギャラリー
照明を抑えた会場に模型一つが浮遊しているように見える。
会場に入るとコリドールの壁面に手描きドローイングが10枚並ぶ。
会場の中央に2025大阪・関西万博〈いのち動的平衡館〉の構造模型が浮かぶ。
これは8つあるシグネチャーパビリオンの一つで、生物学者福岡伸一がプロデューサーを務める。設計依頼を受けたのは2020年1月。
「動的平衡」とは絶え間ない流れの中でバランスが取れた状態を指し、例えば人間の細胞は常に更新し続け半年後には全ての細胞が入れ替わるが、それは細胞の分解と合成の作用がバランスしているからである。
そんな動的な平衡=バランスを建築で表現しようとチャレンジしたのがこのパビリオンだ。
これは8つあるシグネチャーパビリオンの一つで、生物学者福岡伸一がプロデューサーを務める。設計依頼を受けたのは2020年1月。
「動的平衡」とは絶え間ない流れの中でバランスが取れた状態を指し、例えば人間の細胞は常に更新し続け半年後には全ての細胞が入れ替わるが、それは細胞の分解と合成の作用がバランスしているからである。
そんな動的な平衡=バランスを建築で表現しようとチャレンジしたのがこのパビリオンだ。
壁面には設計プロセスが時系列に展示される。
パネルの写真は10月の様子で、屋根はほぼ完成し内装工事に入ろうかという状況。膜屋根ではあるが遮光されており、周囲の開口は日中はカーテンにより光をコントロールし、中央のエントランス部分からのみ光が差し込むようなパビリオン。
展示デザインはTakramが担当している。
パネルの写真は10月の様子で、屋根はほぼ完成し内装工事に入ろうかという状況。膜屋根ではあるが遮光されており、周囲の開口は日中はカーテンにより光をコントロールし、中央のエントランス部分からのみ光が差し込むようなパビリオン。
展示デザインはTakramが担当している。
「世界中から訪れる観客の心を揺さぶるパビリオンを、と意気込んだものの、超軟弱地盤で強風が吹く敷地、半年で解体、建設費の高騰、環境配慮、万博に対する後ろ向きな世論と、複雑な与件の絡んだ難易度の高い設計であった。」との書き出しで始まる。
動的な平衡をカタチにするために考え続けたある日、針金の輪をくねくねといじっていたときに「これだ!」とアイデアが降りてきたそうだ。
動的な平衡をカタチにするために考え続けたある日、針金の輪をくねくねといじっていたときに「これだ!」とアイデアが降りてきたそうだ。
福岡氏への初回プレゼン模型。
美しい形状と構造を成立させるための検討が絶え間なく続く。
当初は鋼管の径が想定より大分太く、補強のためのリブが多数付いていたが、精緻な構造解析、風洞実験、施工時解析などにより、想定通り軽量でシンプルな構造に洗練されていった。
当初は鋼管の径が想定より大分太く、補強のためのリブが多数付いていたが、精緻な構造解析、風洞実験、施工時解析などにより、想定通り軽量でシンプルな構造に洗練されていった。
複雑な形状のリングは3Dでの検討が不可欠であるが、納まりを検討するには500mmピッチで2D断面図の検討が必要となった。
上部のリングを実現させるためにはスラスト力を処理し、ねじれ剛性で抵抗する楕円型の鉄骨基礎とした。軟弱地盤ゆえ、杭基礎ではなく設置面積を多くし、沈み込まない浮き輪のようなもの。わずか半年のための建築の建設資材をそぎ落とすこともできた。
上部のリングを実現させるためにはスラスト力を処理し、ねじれ剛性で抵抗する楕円型の鉄骨基礎とした。軟弱地盤ゆえ、杭基礎ではなく設置面積を多くし、沈み込まない浮き輪のようなもの。わずか半年のための建築の建設資材をそぎ落とすこともできた。
断面図。矩形の部分が基礎だ。
基礎とリングは鉄骨柱で7ヵ所接続され、その柱の周囲は土のマウンドで隠蔽される。
建物は地震よりも風の影響を最も受けるそうで、模型を風洞実験にまで掛け検討した。基礎はリングが風で浮き上がらないようにウエイトとしても効かせている。
基礎とリングは鉄骨柱で7ヵ所接続され、その柱の周囲は土のマウンドで隠蔽される。
建物は地震よりも風の影響を最も受けるそうで、模型を風洞実験にまで掛け検討した。基礎はリングが風で浮き上がらないようにウエイトとしても効かせている。
以上のプロセスを理解した上で構造模型を改めて見ると、上にある黒いリングは基礎を表していることが分かる。
こちらが完成予想図
(©2025年日本国際博覧会協会)
(©2025年日本国際博覧会協会)
模型は1/15で、部材の太さまでも正確に縮尺されている。実際の大きさは長辺約40m、リングのチューブはφ400mmとφ450mm、ケーブルはφ35mmとφ14mm。
このうねりながら立ち上がる部分をどう成立させたか。
模型のケーブルをよく見ると分かるが太いものが何本かあり、そのケーブルで引っ張り合い立ち上がりを支え無柱空間を実現させている。細いケーブルは膜屋根を支えながら、リングにテンションを掛け全体を固めているが、強風や地震の際はしなやかに粘り力学的平衡を保つ。
模型のケーブルをよく見ると分かるが太いものが何本かあり、そのケーブルで引っ張り合い立ち上がりを支え無柱空間を実現させている。細いケーブルは膜屋根を支えながら、リングにテンションを掛け全体を固めているが、強風や地震の際はしなやかに粘り力学的平衡を保つ。
この太さの鋼管を曲げられる最小半径に近い値(約1m)に曲げた。
建設時の写真もいくつか展示されている。
ジェットコースターのようなリング。人が高所作業車で持ち上げられているので大きさが分かる。
本展に合わせてつくった作品集も置かれているので手に取ってみてもらいたい。
橋本尚樹さん
「こどものらく書きの線のような自由な形態を、バランスという構造アイデアを突き詰めて設計することで、限りなく少ない要素で、軽量な建築が実現できないかということに挑戦しました。環境負荷低減と効率が何よりも優先されるこれからの時代においても、建築や都市を計画するときの想像力が縮こまらないよう、未来に向けてわたしなりのボールを投げかけたプロジェクトです。 ぜひ会場に足を運んでパビリオンを体験しにいらしてください。」
※今後ギャラリートークなどでプロジェクトの詳細を聞ける機会があるので下記リンクより確認してください
「こどものらく書きの線のような自由な形態を、バランスという構造アイデアを突き詰めて設計することで、限りなく少ない要素で、軽量な建築が実現できないかということに挑戦しました。環境負荷低減と効率が何よりも優先されるこれからの時代においても、建築や都市を計画するときの想像力が縮こまらないよう、未来に向けてわたしなりのボールを投げかけたプロジェクトです。 ぜひ会場に足を運んでパビリオンを体験しにいらしてください。」
※今後ギャラリートークなどでプロジェクトの詳細を聞ける機会があるので下記リンクより確認してください
【橋本尚樹展 before the beginning –はじまりのけはい–】
Naoki Hashimoto Exhibition
会期:2024年11月2日〜12月14日
開廊時間:月 13:00~18:00、火〜土 10:00~18:00
日・祝日 休廊
入場:無料
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9)
ギャラリートークなどの詳細:www.nha.co.jp/news/753
【いのち動的平衡館】
基本設計:NHA + Arup
実施設計:鹿島建設 + NHAグループ
施工:鹿島建設
パビリオン詳細:www.expo2025-fukuoka-shin-ichi.jp/concept
Posted by Neoplus Sixten Inc.
Naoki Hashimoto Exhibition
会期:2024年11月2日〜12月14日
開廊時間:月 13:00~18:00、火〜土 10:00~18:00
日・祝日 休廊
入場:無料
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9)
ギャラリートークなどの詳細:www.nha.co.jp/news/753
【いのち動的平衡館】
基本設計:NHA + Arup
実施設計:鹿島建設 + NHAグループ
施工:鹿島建設
パビリオン詳細:www.expo2025-fukuoka-shin-ichi.jp/concept
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