ニコ設計室展「それはあなたの言葉から」
Taketo Nishikubo
11. 9月 2024
All photos by Neoplus Sixten Inc.
西久保毅人/ニコ設計室の個展「それはあなたの言葉から」レポート。“建築の王道からは外れている” と自己評価する西久保が施主の言葉や思いを丁寧に拾い上げ、人や街が幸せになるような建築を作り続けた23年間を振り返る。2024年9月7日〜10月19日/プリズミックギャラリー
会場は東京・南青山のプリズミックギャラリー。外苑西通りに面したファサードからは本展の賑やかな様子が見える。
土日祝日は通りに面した扉から出入りできるが、平日は右奥ピロティ側からの出入りとなる。
ファサードや、展示空間に溢れる吹き出しは設計依頼の際出てきた施主の言葉の数々。
【開催趣旨】
独立して今年で23年目になります。出会った建主さん達からいただいた言葉に導かれるように建築を設計させて頂いてきました。その一つ一つは建築を作ると決めた建主の、それぞれの人生の中から染み出したものです。でもその言葉は個人的な事のようで、街の事のようで、地球の事のようで、世界の事のようでもありました。それぞれの超個人的な背景からこぼれ落ちた言葉から設計させていただいたちいさなちいさな建築たち。完成した建築は言葉を発しないけれど、「うふふ」とこの世界をちょっとだけHAPPYにしてくれるといいなといつも考えています。
ピロティ側より入ると二重のアーチになっており、ニコ設計室の世界観に入って行くことをイメージさせる。
スタッフ手描きの会場案内図。
作品は入り口から反時計回りに旧→新が並んでいる。
本展では、普段ニコ設計の住まい作りに携わる職人や元スタッフなどと協働し(巻き込み)ながらの開催。
会場に溢れる施主からの言葉。
施主からはもちろん具体的な要望があるが、西久保さんが大事にしているのは “施主がどのような人で、何に興味があり、どのような暮らしを求めているか” だ。
言葉は空想的であったり、曖昧であったり、謎かけのようなものもある。
西久保さんは元々「ひとがどのようなこと考えているのか」といったことに非常に興味があり、「その言葉素敵だな」と思ったことに惹かれ、それらをくみ取って形にするのが楽しく、結果的にそれがたまたま建築というものでアウトプットすることになったという。
手前の白模型が2003年のデビュー作〈星さんの家〉
会場の所々に置いてあるスクラップブック(下段)。施主に好きなものや好きなこと、興味のあること、旅行の様子などを書いたり貼ったりしてもらった “つぼノート”と呼ばれるもの。
これをみながら話を聞き、ファーストプレゼンに臨むそうだ。
会場の奥に進むとしっかりと内装設計された空間となり、巨大な猫が昼寝をしている。
巨大な猫を置くことで空間のスケールを変換し、観覧者はこびとになって自分が模型の中に入ったかのように展示を楽しめる。
板の間は小上がりになっているので下足を脱ぐ。
西久保さんは、ギャラリーというところは何か触ってもいけない、静かにしなくてないけないといった雰囲気が居心地悪いと感じていて、今回の展覧会ではとにかく “寛いでもらう居場所にしたい” ということから考え始めた。そのためには “下足を脱いでもらう” 、そして腰を下ろしたら周りに何かある、手に取ってみてみよう、覗き込んでみようという雰囲気になるようにした。
猫もモルタルで頑丈にできているので座ることができる。
今までに120件ほど設計したが、殆どの作品の模型を保管しているそうで、会場にはその中から60個近く展示した。
吹き出しには「家の中が狭くなってでも、外でごはんとビールを楽しめるテラスが欲しいんです!」や、「ってことはですよ、この道、うちの庭みたいなもんですよね?」などもある。
左下には「このなーんにも意味のない壁が一番意味あるんだよ!」とある。その上の模型の施主の言葉で、小さな家の前に “意味のない壁” を造り、街(商店街)と繋がりながら街とのバッファーとなる “意味” をもたせた。
模型を見ると分かるが、そういった建築未満の空間や離れが多いことに気付く。
「野良ネコがやってくるような家がいいです!」
敷地に路地を通すような計画も多い。
スタッフの方も古い資料を開いて、歴代の施主の思いを時間を忘れて振り返っている。
壁の周辺はここ7〜8年くらいの近作が中心となる。
どの模型も眺めていて本当に楽しい。
1/30模型では内装の仕上げや色彩も検討されている。
これは2023年にマンションのリノベーションにあたり、建主家族が作成したつぼノートの進化系。レコードサイズに折りたたんで渡されたという。折って見るとページ毎に情報が整理されているが、この様に広げると子供達と暮らす生活の全体像が俯瞰できるように作られている。「要望の伝え方にもそれぞれの家族らしさが現れてきて、それがとても感動的。」だと西久保さん。
設営に携わったスタッフの方たちと
左から主担当の高谷竜太さん、下川愛月さん、岩下沙紀さん、西久保毅人さん、小坂息吹さん
(猫のポーズは筆者がお願いしたわけではなく自主的にされていました)
展覧会のポスター
【ニコ設計展 それはあなたの言葉から】
〜世界をHAPPYにするちいさな建築〜
会期:2024年9月7日〜10月19日
開館時間:10:00~18:00(月曜12:00~18:00)
土・日・祝日は在廊予定
入場:無料
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9)
詳細:prismic.co.jp/gallery/works/?p=3872
Posted by Neoplus Sixten Inc.
〜世界をHAPPYにするちいさな建築〜
会期:2024年9月7日〜10月19日
開館時間:10:00~18:00(月曜12:00~18:00)
土・日・祝日は在廊予定
入場:無料
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9)
詳細:prismic.co.jp/gallery/works/?p=3872
Posted by Neoplus Sixten Inc.