住宅建築賞2024入賞作品展
26. 8月 2024
All photos by Neoplus Sixten Inc.
「住宅建築賞2024入賞作品展」レポート。新人建築家の登竜門として定着している東京建築士会主催のアワード。多様化している「すまい」の新しい可能性を見出そうとするもの。
2024年8月20日〜8月28日/建築会館ギャラリー
会場は日本建築学会の建築会館ギャラリー
審査委員長は吉村靖孝
審査員は大野博史、倉方俊輔、中川エリカ、西沢大良
吉村靖孝による賞の趣旨
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本賞は「新人建築家の登竜門」を謳う賞で、過去の受賞者のその後の活躍を見れば看板に偽りなしと言える。ただ、昔から気がかりだった事がひとつあって、それは、東京周辺以外の住宅作品を審査対象から除外して来た事だ。もちろん、大前提が"東京"建築士会の顕彰活動であるし、現地審査を一日で終えるなどの条件から考えても東京周辺限定は致し方ないのだが、一方で、新人建築家にとって東京に作品があることは単なる偶然でしかないし、仮に東京在住かつ東京建築士会会員であっても東京に作品がなければ応募できないといった矛盾もある。登竜門として全国的知名度を得た今となっては、東京限定の募集はどこかちぐはぐで、東京一極集中に対し無批評かつ無責任にも映るし、ともすれば東京=全国と吹聴しているかのような誤解を与えかねない。
であるならば逆に、今回はいっそのことこの住宅建築賞を「東京のローカリティ」を考える機会と捉えてみたい。localの語源はラテン語のlocus(~の場所)で、つまり特定の場所に根ざすことこそが肝心で、必ずしも「地方の~」を意味しない。世界随一のメガシティであることとローカルであることは矛盾しないのである。また特に近年は、感染症や戦争が各地のローカリティを蹂躙する様を目の当たりにし、私自身もローカリティについて考える機会が増えている。はたして「東京のローカリティ」は可能か。もし可能ならばそれはどのようなものなのか。「場所」としての東京の可能性を押し広げるような作品の応募を期待している。
今年の入選者5組
住宅建築賞 金賞:増田信吾+大坪克亘+湯原彰一/荒木 美香/廣橋利昭
住宅建築賞:針谷將史、向山裕二+上野有里紗+笹田 侑志、湯浅良介、御手洗龍
住宅建築賞 金賞〈窓の庭〉/千葉県
・増田信吾+大坪克亘+湯原彰一(増田信吾+大坪克亘建築設計事務所)/荒木美香(Graph Studio)/廣橋利昭(広橋工務店)
敷地に対して家が支配的にならないよう、部屋、ドア、窓、照明、階段などの様々な要素を優先順位なく同時に立ち上げることを心がけ、既存の斜面を一緒に生活するチャボの居場所とした。
斜面に向いた25個の小さな窓が様々な場面で現れ、窓の先にある斜面を緩衝とし、この場所で生活していることを無理なく経験できるよう設計した。
窓辺の仕上げに使った様々なパターンのタイルの考え方。
住宅建築賞〈安部邸〉/埼玉県
針谷將史(針谷將史建築設計事務所)
家そのものが家族のための公共空間になり得るか、空間と構造の新しい関係性から家の公共性について考えた。
6人の家族が親密な距離と個人の距離を同時に得られる空間とするために、複数の小さな中心と周縁が構造体によってぐるりと一つに連なり、構造体と中庭が家族の間を取り持つことで、家が生活のための器であることを超えて人と対等な関係を築く。
中央に配置された円環ラーメンフレーム。
住宅建築賞〈残像の家〉/東京都杉並区
向山裕二+上野有里紗+笹田侑志(ウルトラスタジオー級建築士事務所)
これといった特徴の無い接道面のファサードを無表情にし、近隣の住宅が庭をつくっている私道側をメインとして路地の雰囲気に貢献することとした。
無表情な外観とは対照的に室内には象徴的な黒い螺旋階段の筒を中心に、装飾的な要素が取り囲む趣味的な断面が展開する。
内部を表出しないファサードと、趣味的内部空間、路地のような半プライベート空間に向けて顔をつくることで、私的な営みが生み出す東京の都市景観に貢献する。
室内の塗り分けをスタディした痕跡。
住宅建築賞〈FLASH〉/神奈川県大磯町
湯浅良介
厳しいコスト制限のもと、敷地に455mmの立体グリッドを敷いて徹底的に面の構成を検討した。構造材は仕上げや建具によって隠蔽され、全ての仕上げ材そのものが持つ寸法を活かすモジュールに割り付けられ、取り合う箇所は目地や押縁によってむしろ強調される。
「見せること」と「隠すこと」がこの建築の現れとなっている。
住宅建築賞〈Grove〉/埼玉県所沢市
御手 龍(御手洗龍建築設計事務所)
かつての街割を崩しながら無機質な高層化が進む街の中に残された9.1m×38.4mの細長い敷地に、大きく外に開きながら近隣や自然環境との動的な関係を築き続ける新しい積層建築の在り方を試みた。
店舗、事務所、賃貸住戸、オーナー住戸が半分近くの外部空間を伴いながら立ち上がる。ここで生まれる筋書きのない建築の秩序と強度が、内外一体となった空間の中に多様な場を作り出す。
自由に外部との関係を築いていくことのできる柱梁のラーメン構造。
>> 住宅建築賞2024入賞作品集(審査講評・作品詳細)PDF
【住宅建築賞2024入賞作品展】
RESIDENTIAL ARCHITECTURE PRIZE 2024
会期:2024年8月20日〜8月28日
開館時間:10:00~17:00
入場:無料
会場:建築会館ギャラリー(東京都港区芝5-26-20 建築会館1F)
主催:一般社団法人 東京建築士会
詳細:https://tokyokenchikushikai.or.jp/news/2024/06/6014/
Posted by Neoplus Sixten Inc.
RESIDENTIAL ARCHITECTURE PRIZE 2024
会期:2024年8月20日〜8月28日
開館時間:10:00~17:00
入場:無料
会場:建築会館ギャラリー(東京都港区芝5-26-20 建築会館1F)
主催:一般社団法人 東京建築士会
詳細:https://tokyokenchikushikai.or.jp/news/2024/06/6014/
Posted by Neoplus Sixten Inc.