MORANDI

Satoshi Kurosaki | 3. 12月 2024
All photos Neoplus Sixten Inc.
東京赤坂の分譲マンションの22階、185㎡の住戸をフルリノベーションした。
プロジェクトの経緯は、2020年にイタリアのモルテーニ (Molteni&C) がイギリスのグローブトロッター (Globe-Trotter) とのコラボレーションでワードローブやトラベルケースの開発をした際、黒崎さんがクリエイティブディレクターを務めたことに始まる。そしてモルテーニのアーキテクト&プロダクトデザイナーであるニコラ・ガリッツィア (Nicola Gallizia) と「今度、実際の建築空間で一緒に新たな景色をつくりましょう。」と意気投合した。

その後不動産販売・開発を行うゼニアスが本物件を取得。APOLLOの建築とモルテーニの家具を高く評価していた同社が、全体をモルテーニで構成された住宅にフルリノベーションし販売するということで黒崎×ガリッツィアの協働プロジェクトがスタート。

APOLLOは基本設計をするマスターアーキテクト、ガリッツィアは家具や仕上げ、照明やアートを選定するインテリア監修という体制をとった。
モルテーニ最大の特徴はクローゼットなどに代表されるシステム収納。そのシステム収納を「建築の核」、空間の「ストラクチャー」として家具で空間を設計した。
LDKから寝室までシームレスなシステム収納による連続性があり、キッチンとパラレルに融合しながら独特のステージ性を演出。
玄関を入ってすぐ居室の中央にウェルカムダイニング、左右にリビングとキッチンを振り分けた。
この住宅はファミリーユースよりも海外にいくつもの拠点がある方が東京での拠点にしたり、ゲストを招いた際にどう使われるかといったパブリック的なシーンが想定されている。
ゲストはこのダイニングや、キッチンのバーカウンターで食事やお酒を楽しむ。
その後リビングでゆったりしながら歓談するようなイメージだ。
ムードボード。作品タイトルはイタリアの画家Morandiからきている。彼の絵画からカラーコンテクストを抽出しインテリアに反映している。
(Nicola Gallizia Design Studio 提供)
濃淡のあるウォームグレーのファブリックをメインに、ダークブラウンのテーブルで空間を引き締め、ゴールドが所々に入りアクセントとなる。
ローテーブルにはエタノール暖炉が備わる。テレビのバックボードには大判の大理石タイル。
右手、奥の主寝室まで30m近く収納が間接照明と共に連続する。
「日本の集合住宅は収納に対するヒエラルキーが低い」という黒崎さん。今回は「収納が主役になる空間づくり」をテーマにしており、単なる廊下をつくるのではなく収納に沿って歩くことでシークエンスが生まれ、収納そのもので空間をつくる、パブリック空間からプライベート空間まで収納で連続するストーリーとしている。
キッチンもモルテーニ。メンテナンス性を考えるとシンクはステンレスや陶器が良いが、今回は総大理石にこだわり切り出した石の塊が置かれているように演出した。
収納にサンライズオークと、天井にダークオークのコンビネーションでコントラスト生み出している。
集合住宅のため天井は不燃材が必要となる(ニッシンイクス)。
キッチンの奥。右手に水回り、左手に個室、その奥に主寝室とワードローブルームへ続く。
建具の突き板は収納家具と合うように同じ材をイタリアから取り寄せたうえで製作した。
左手のダークカラーの収納はワインセラーと両開きの冷蔵庫。
水回りにモルテーニの商品はないので、全体をトラバーチンタイルで設え “モルテーニであればこの様な空間にするのでは” という世界観を創作した。
奥の壁一面はSICISのガラスモザイクでフォーカルポイントをつくった。
シングルベッドが置かれた個室。ワークスペース、ゲストルーム、子供室としても使えるような部屋。
壁は温もりのあるジョリパット。
ワードローブルーム。モルテーニの洗練されたワードローブシステム「Gliss Master」で構成。
収納ではなくフィッティングするための部屋は日本の集合住宅ではあまりなく、モルテーニの世界観を表す重要な部屋の一つだ。
主寝室(エンスイートルーム)。大開口で都心の絶景が見渡せるが、一度カーテンを閉じればダークな色調の落ち着いた空間となる。
一面にシルバーのクロスを貼り、時間帯によって異なる周囲からの光を柔らかに映し出す。
右手の開口も掃き出し窓だが、キャビネットを設置し少し開放感を抑えた。
洗面室はチェポストーンタイルで統一されたシャワールーム。片側が全面窓のため、スクリーンを貼った上で格子を造作した。
黒崎敏さん
「光と影をテーマにクリエーションを行うニコラ・ガリッツィアとは話せば話すほど基本理念が近いと感じ、互いに一緒にやりたいねという話をいつもしていて、ようやく実現させることができました。建築、インテリア、キッチン、家具、アート、ホームウェアに至るまで全てが通底したオリジナリティで一体感のある空間は、これまでの集合住宅には見られない最上の居心地となっていると思います。」
【MORANDI】
設計・監理:黒崎敏/APOLLO
インテリア監修:ニコラ・ガリッツィア (Nicola Gallizia) 
事業者:ゼニアス
照明設計:リップルデザイン
施工:リフォームキュー
占有面積:185.44 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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