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Takayuki Soeda
15. 5月 2024
All photos by Neoplus Sixten Inc.
敷地南西面(左)の道路は旧神田川で、かつてこの辺りを蛇行しながら流れていた。本流は40m程西に移動したものの、元の流れは暗渠となり周辺に見通しの効かない複雑な路地を形作っている。
セットバックした部分に木々を植え街に緑を還元し、2つの角に象徴的な意匠を持ってくることで、蛇行した路地を曲がった先に現れる、道行く人のアイストップとなるようにした。
平面図。30㎡台の1Kから60㎡台の2LDKまで7住戸からなる。
3方を道路に囲まれた特性から、方向性を持たない井の字型の壁を設定。これを一枚の外壁で囲み、北東・南東に伸びた道路に対して角を削った。そして中心のマスを共用部とし、風や光を取り込みやすい周囲のマスは居室とした。
角を削ってつくられた南東の窓はかなり攻めた納まりをしている。室内からは路地方向に抜けをもたらすこととなる。
エントランスは北側。向かいに並ぶ戸建て住宅が南向きに開いているのでこちら側の開口を抑えた。
エントランスは2層吹き抜けで大きな門にも見える。
外壁に対して内側は白を塗装。
1階エントランスホール。共用部は白を基調に、川霧の中にいるような淡い光の空間とした。
102号室は2LDK。この室は寝室利用を想定している。
敷地南北でGLの高低差が60cmほどあるため、リビング・ダイニング側はフロアが下がる。
リビング・ダイニング。下がった分、天高は3,180mmもある。一般的に不人気となりがちな1階住戸を大きな気積の空間とすることで価値を上げている。
左手、引戸で仕切られ、納戸や書斎、寝室にもなる使い勝手の良いスペースを設けた。
なお、この住戸は計画中から想定していたわけではないが、添田さんの新しいアトリエとして移転するそうだ。
シンプルなキャンティレバーの階段で2階へ。
2階共用部は家具を置いてラウンジに。
分譲集合住宅にあるような共用空間で賃貸価値を高めている。
202号室。路地の抜け方向に開いたフルハイトのFIX窓。視界を妨げないよう網無しの防火ガラスを採用。
各窓にはバーチカルブラインドを取り付けた。
寝室北側の壁に一筋の虹が映り込んでいる。
これは設計者である添田さんからのサプライズ。バルコニーのガラス手摺りパネルの下端を意図的に下の階に少し飛び出させて、プリズム効果による虹が出るようにしている。「いつどの角度で現れるかまでは計算していないが、どこかには出るだろうと思っての仕掛けです。」と添田さん。
3階共用部。屋上の塔屋までを天高5m超のダイナミックな吹き抜空間とした。
吹き抜け空間は南北に開口を設け、薄暗くなりがちな階段室に光をもたらしている。
1階から3階の共用部に、単なる動線にせずそれぞれ特徴のある効果を持たせている。
301号室。玄関を入ってすぐに洗面台で、廊下を効率的に利用している。
通常玄関から左右振り分けとなる住戸では、この位置はどの採光面からも離れ暗くなりがちだが、塔屋を利用したハイサイドライトから光を取り込んでいる。
寝室。浴室とトイレをコアとして、洗面台前、キッチンを回遊動線に。
ガラス張りのバルコニーからキッチンへも外光を引き込んでいる。
エアコンの室外機は屋上に設置しているので、このバルコニーは室外機置場ではなく物干しとしても使える。
リビング・ダイニング。こちらの開口は腰壁と造り付け家具で窓際に居場所を作った。
303号室ではハイサイドライトが水回りに。
302号室。202号室と比べ天井に梁がないのですっきり見える。
FIX窓からは西新宿の高層ビル群が望める。
ルーフバルコニー。30㎡ほどあるが管理面から302号室の専有部とした。
添田貴之さん
「川を基準とした古い街区割りで、見通しの効かない細切れの街路空間が連なる街並みは、身体に馴染むような感覚を覚えます。そんな街並みにある敷地は不整形で3方向を道路に囲まれた特性から、方向性を持たない井の字型の壁を設定し、道路に対して屋内から視線が抜けるようにしました。井の字の中心は共用部で、それぞれの階で特徴を持たせたデザインとしました。」
【i-Ap】
i-Ap apartment
設計・監理:添田建築アトリエ
構造設計:ビー・ファーム
設備設計:アルキテック
施工:渡辺富工務店

用途:共同住宅
構造規模:RC造 地上3階建
敷地面積:212.33 ㎡
建築面積:141.12 ㎡
延床面積:404.74 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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