中村高淑による横浜の「桜台の家」

Neoplus Sixten Inc.
23. 8月 2016
Photo by Neoplus Sixten Inc.

敷地面積77m2、延床面積76m2。木造2階建て。
ビルトインガレージにはポルシェが納まり、2階には台形の大開口が目を引く。

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2階には半周、バルコニーが回っている。

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ガレージの折れ戸と玄関扉を開けると1階の半分が露わになる。
実はこのポルシェ、ご主人のお兄さまの形見だそうで、この車が納まるガレージが第一条件だったとか。
ビルトインガレージ付き住宅を多く手掛け、ご自身もポルシェ乗りの中村さんに声が掛かった。

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当日は引き渡し。この家に初めて車庫入れをしたご主人はガレージに納まるポルシェを見て、お兄さまのことを思い出し涙を流したが、「今までで一番緊張した車庫入れだった。」と最後には笑った。
ひとの記憶と大切なモノを繋ぐ建築だ。

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ガレージのフロアはモルタルに顔料で着色し、タイヤ痕やオイルなどの汚れが目立たないように配慮。
右から収納、階段室、トイレ、洗面、クローゼット、個室と続く。

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個室は一部畳み敷きになっており、同居する奥さまのお母さまの部屋になる。

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階段室は鮮やかなロイヤルブルー。蹴込みには乳白の樹脂板がはめ込まれており、階段下のトイレの明かりが淡く透過する仕掛け。

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振り返ると格子状の仕切りが見える。上部にもハイサイドライトを設け階段室が暗くないように。
格子にはポリカーボネートの板が挟み込まれている。

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2階LDK。北側斜線に沿った片流れの屋根。西面と南面には天井までの大開口と、吹き抜けによる大きな気積、さらにデッキ張りのバルコニーにより空間が外部と連続し気持ちいい。

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大開口の先に見えるのは内井昭蔵による集合住宅の名作「桜台コートビレジ」。名建築と、そこに植わる桜を借景とするための大開口だ。
ちなみに開口のガラスは光や熱を選択透過・反射するLow-eペアガラスを採用しているので、見た目ほど暑さは心配ない。またこの後バーチカルブラインドを付ける予定。

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 1970年竣工の桜台コートビレジはいわゆるデザイナーズマンションの先駆け的存在。雁行しながら各住戸は南西面を向いているので、こちらへの視線は殆どない。(良好な周辺環境からいまだに空き待ちの人気物件だそうだ)

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階段室の仕切りは飾り棚になっており、ご主人のミニカーコレクションが並ぶ予定。
梁の上には間接照明が設えてあり天井を照らす。
床はパイン材、建具や天井はシナ材。

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キッチン側(西面)を見る。キッチンの背後は水回り、キッチンからも浴室からもバルコニーへ出られ、物干しも容易なよう家事動線を集約。手前には黒皮ままの鉄製階段がロフトへ伸びる。

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ロフトはご夫婦の就寝スペースに。

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中村高淑さん。「桜台コートビレジは学生の頃、集合住宅の課題で調査に訪れたことのある思い出深い建築です。その目の前に住宅を設計するとはまさか思いませんでした。」「この敷地は築15年ほどの古家付きで売りに出されていました。リノベも検討しましたが最終的には建て替えとなり、僅か15年ほどで解体される住宅に心が痛みましたが、この住宅は眼前の桜台コートビレジのように長く愛される建物になってくれたらいいですね。」

【桜台の家】
設計監理:unit-H 中村高淑築設計事務所、カザニエ 一級建築士事務所
構造設計:吉田一成構造設計室
施  工:親松工務店

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