山元町役場
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- 宮城県亘理郡山元町
- 年
- 2019
東日本大震災で甚大な被害を受けた山元町役場庁舎の新築復旧のプロジェクトである。
山元町は、敷地は宮城県の東南端にあり、太平洋に面し、水田の広がる低地(東)と、山側(西)に大きく分かれている。庁舎は、ほぼそれらの中心に建ち、庁舎の建つ敷地は中央公民館、歴史民俗資料館、ふるさと伝承館などの公共施設が集まる場所でもある。
東日本大震災により、まちの約3割が浸水し、人口減少、少子高齢化という課題に加え、震災復興としての新しいまちづくりの一端を担う庁舎の在り方が問われていた。そこで、われわれは「海と山をつなぎ、人と人をつなぐ要としてのタウンホール」というコンセプトをかかげ、2015年のプロポーザルで設計者に選定された。求心的な要・復興のシンボルとして、人々が寄り添い、まちの復興・まちの未来をみんなでつくりあげていく、新しい庁舎を提案した。
敷地の中央に建つ鉄骨2階建ての庁舎は、杉の羽目板張りの大きな庇をもち、その庇下空間に展開される活動の風景がこの場所の顔となり、人々を迎え入れる。冬の山から吹き下ろす冷たい風や太陽の光など、自然条件に応答しながら、全方位的に周辺のまちとつながる、裏のない建築を目指した。
執務スペースは、職員の方々とワーキンググループをつくり、新しいワークプレイスの議論を重ね、課を超えた横のつながりを生み出し、町民スペースとも一体となるワンルームとした。北面のハイサイドライトから光を取り込み、大きな4つの吹き抜けを通して光が1階まで届く明るい屋内広場のような場所である。離散的に配置されたスモール・コアによって、多様な場をつくりだしている。
このプロジェクトは、山元町行政施設等将来計画検討委員会専門部会長を務められた小野田泰明氏(東北大学大学院工学研究科教授)をはじめ、職員、議員、町民の皆さんと新しい庁舎のことだけでなく、これからのまちづくりまで、数多くのワークショップや打合せなど、さまざまな議論を重ねてきた。甚大な被害を受けたこのまちのこれからの未来について官民越えて話し合う風景こそが、新しい復興庁舎としての在り方そのものである。
この新しい庁舎が、人と人をつなぎ、新しいふるさとの風景をみんなで育てていく場となることを願っている。