岸和郎:時間の真実 – TIME WILL TELL

Waro Kishi
24. juin 2021
All photos by Neoplus Sixten Inc.
「時間の真実:time will tell」というタイトルは岸が未だ建築家として活躍中であるため、その建築家としての作品、営為の評価は「time will tell」、すなわちこれから「時間の経過が教えてくれる」だろう、それこそが建築家とその作品にとっての「時間の真実」ではないか、という意味で名づけられた。会場は4つの展示室に分かれておりそれぞれテーマを設けた。
1つめの展示室は初期の代表作品。アナログ時代の手描き図面が並ぶ。
〈日本橋の家〉1992、大阪
計画初期の概念模型。岸が建築家としての方向性を決定づけることとなる作品。1996年日本建築学会作品賞受賞。
1996年、第6回ヴェネチア・ビエンナーレに出展した際のパネル。
日本橋の家、手描き図面。
〈京都科学・開発センター〉1990
手描きパース。
中央の島には〈KIM HOUSE〉1987、〈洛北の家〉1989、〈園部SD Office〉1993、〈紫野和久傳〉1995が並ぶ。
KIM HOUSEが自身で描いた最後の手描き図面だそうだ。
〈堺の家〉2002、大阪
パステルを使って着色した図面。
2つめの展示室は初期から2011年までの作品と、その模型を時系列に並ぶ。
数多くの模型と、壁にはカラードローイングが並ぶ。ほかの室も含めこれら全てが工芸繊維大の美術工芸資料館に収蔵される。
リトグラフに見えるドローイングは、トレーシングペーパーの裏から、マスキングしながらアクリルガッシュを順に塗り重ねる、アニメのセル画のような手法で描かれたもので、非常に手間のかかるものだそうだ。
〈AUTO LAB〉1989、京都
〈湯の香橋〉1997、熊本
湯の香橋の模型。
〈Hu-tong House〉2002、西日本
2002年、第8回ヴェネチア・ビエンナーレに出展。日本館のテーマが「漢字文化圏における建築言語の生成」ということから、和紙にドローイングを描き、パステルで日本的な色調を用いた。
〈テレシタス・ビーチ開発計画〉2000年、スペイン・カナリア諸島
リゾートのマスタープランのコンペ案。
〈立礼茶室計画案〉2009年、東京
根津美術館に建設予定だった茶室。
〈House in Freiburg〉2008、ドイツ
海外で初めて手がけた住宅作品。
〈武蔵野段丘の家〉2005、東京
〈文京の家〉2000、東京
狭小住宅から、大邸宅、オフィスビル、公共施設、教育施設、土木まで多岐に渡るプロジェクトを俯瞰的に見ることができる。
3つめの展示室は、教鞭を執った3大学の研究室で手掛けたプロジェクト。中央に3つの教育施設の模型と、それぞれの施設が使われている様子を映像で観ることができる。
手前から〈京都大学北部グラウンド運動部室棟〉2014、〈KIT HOUSE〉2010、〈京都芸術短期大学高原校舎〉1982の模型と、壁面に〈国立国会図書館関西館 計画案〉1996。
図面は自由に閲覧可能だ。
もう一つは〈Max Mara headquaters〉1995、イタリア
指名コンペで出した、イタリアのファッションブランド、マックスマーラ本社屋の計画案。
4つめ、最後の展示室は、近作と現在進行中から未来のプロジェクト。
〈Office Blocks in Nanjing〉2018、中国
本展をサポートした木下昌大も協働したコンペ案。
〈文化庁・新行政棟移転施設整備〉2018〜進行中、京都
本展で初公開のプロジェクト。
京都府庁の敷地にある、旧府警本部(左)を修復し、新設のビル(右)と接続した二棟に東京から移転してくる文化庁が入る。

2021年7月24日に開催予定の関連シンポジウムにて詳細が発表される。全体のデザインアーキテクトとして岸、アドバイザーに田原幸夫、そして日本設計との協働となる。
6月21日、現場の様子。旧府警本部と、奥では新棟の基礎工事をしている。
複数の住宅プロジェクトも進行している。「公共施設もいいが、住宅は制約が少ないので楽しい」と岸さん。
〈京都造形芸術大学 望天館〉2019
〈京都大学桂図書館〉2019
〈House in Beijing〉2016、中国
地下駐車場に20台以上の車が収まる大豪邸。KIT HOUSEの要素が随所に見受けられる。
世界各地を訪れた際のスライド。
阪急で販売されることとなった家具シリーズ。ベッド、キャビネット、、
立礼卓、、
そしてソファ。
ソファの前にはなぜかミニカーが並ぶ。
岸さんが乗り継いできた車の遍歴だそうで、現在は右端のルノー、FIAT、そして日産セドリックの旧車を所有。
長年愛用するCassinaのノートパッド。こちらも今回寄贈される。
岸和郎さん。
「この展覧会は回顧展ではありません。過去の作品も並んでいますが、現役の建築家として活動させていただいており、まだ未来に完成する作品もあるからです。展覧会のタイトル『Time Will Tell』を翻訳すると『時間が教えてくれること』なのですが、少し意訳して『時間の真実』としました。一人で仕事を始めた1981年から現在に至っても考えていることは何も変わっていないのですが、ただ違うのは、この40年間の仕事の蓄積だけは私の後ろに残っています。『Time Will Tell』時間が教えてくれること、それが可能なら教えて欲しいのは自分だと思い続けた40年間なのですが、その自分の試行錯誤を、これまでの仕事を総覧的にまとめるだけでなく、現在進行中の仕事までを含んでの試行錯誤をありのままお見せしたいと思います。」
本展と合わせまとめられた記念書籍「TIME WILL TELL」。
岸さん曰く「作品集と著作の中間のような本」で、400ページ全編日英2カ国語で書き下ろしとなる。
本展を訪れたら合わせて見学したいのが学内にある、食堂・売店の建物〈KIT HOUSE〉だ。
【岸和郎:時間の真実 – TIME WILL TELL】
会期:2021年6月21日〜9月11日
休館日:日曜日・祝日・夏季休業期間(8月12日〜8月17日
開館時間:10:00〜17:00(入館16:30まで)
会場:京都工芸繊維大学美術工芸資料館(京都市左京区松ヶ崎橋上町)
詳細:www.museum.kit.ac.jp/20210621.html

【シンポジウム「現代建築と保存_文化庁京都移転を巡って」】
日時:2021年7月24日、 13:30〜16:00
会場:京都工芸繊維大学センターホール
パネリスト:門内輝行、田原幸夫、石田潤一郎、古賀大、岸和郎
モデレーター:笠原一人

Posted: Neoplus Sixten Inc.

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