庭園緑地の邸宅

Teitakusubako
27. 3月 2024
All photos by Kentaro Nemoto
まず模型で説明する。ゆったりとした敷地(約300坪)に各室を、ごろっとした石のような5つのボリュームに分けて配置し、それらを1枚の屋根で繋ぎその下をLDKとしている。
敷地の西側から北側にかけて国有の原生林で、その木々の見え方が良い方向に各ボリュームの隙間を設け、LDKからの視線の抜けをつくりさらに各種の庭を愛でられるようにしている。
住宅密集地ではないが東側や南側には住宅が建ち並ぶ。しかしそれぞれが豊かな植栽を設け互いにプライバシーを確保しているためほぼ緑に囲まれているが、東の一面だけ人工物が接するという環境。
概念模型。
鉄扉を開け、多様な植物が植わるアプローチを進む。右手は駐車場のボリュームで、正面が玄関となる。
植栽はル・ベスベが担当した。
まずは庭から。
施主からはF・L・ライトや、ルイス・カーンの作品の写真を見せられ、リゾート感のある住宅を望まれた。
広い敷地ではどこに建物を配置し、どこに向かって抜けをつくるかが難しい。計画初期では、平面図を修正しては敷地を訪れて縄を張り確認といった、ボリュームの配置検討に非常に多くの時間を費やしたそうだ。
作品タイトル通り庭は全面の緑地だ。
庭と屋内の間にテラスで中間領域を設け、外と内の親密性を調整している。
玄関へ。軒は2mせり出す。
整然と構成された玄関ホール。右手はアプローチ側で繊細な縦格子が目隠しとなっている。
玄関ホールから右に折れるとLDK。
タリアセンやロビーハウスを彷彿させる石積みやレンガ積み、、
落水荘の窓から見えるような景色、そして四方からのハイサイドライトや、強調された水平ラインなどライトを感じさせるテイストを早坂さんの独自解釈でまとめている。
冒頭で説明した各ボリュームの間から様々な表情の庭が覗く。
それらのボリュームの上に成300mm×幅105mmの梁を掛け、屋根が軽やかに乗る。
ダイニングは暖炉の石積みで緩やかにゾーニングされる。ダイニングセットとリビングのソファはリッツウェルを選んだ。床は無垢のオーク材(オスモ)
右奥が多目的室のボリューム、左奥が和室のボリュームとなる。その間の抜けは隣家となるため視線を受けとめるパネルが嵌められ、アートを飾るスペースにもなる。
また、ダイニングからは南北両面の庭を楽しむことができる。
ダイニングから見返す。
多目的室は庭に突き出したような恰好で、L字型に全開にできる。
石張りのテラスは敷地の駐車場に残されていたものを利用している。
壁や天井は砂漆喰で仕上げた。
和室は若干緑に調色された漆喰で仕上げ、開口を抑えた空間に一条の光が差し込む瞬間もある。
客間利用のほか、炉が切られており茶室としても利用する。森に面した地窓は開閉可能でにじり口にもなる。
LDKを横切り玄関ホールの前。右手に和風の庭、寝室のボリューム、奥にバリ風ガーデン、左手が浴室のボリュームとなる。
和風の庭。光学ガラスのオブジェと苔庭。
バリ風ガーデン。日本の気候にも適応できる亜熱帯の植物を植え、非日常的な南国リゾートのスパの雰囲気に。
浴槽からはこのような眺め。浴槽は竜山石。
浴室と寝室はテラスを介して連続する。原生林に面している完全なプラベートガーデンが広がり、季節や時間に合わせて南北の庭を楽しめる。

 「『開放感と親密さ』のバランスについて改めて丁寧に考えました。何度平面図を修正しては現地に地縄を貼り直したことか。言い換えれば、それは『外と内』あるいは『部屋と庭』のバランス、ひいては『人間と自然』のバランスの再考だったと感じています。」と早坂直貴さん
【庭園緑地の邸宅】
A residence in parkland

設計・監理 :邸宅巣箱/早坂直貴
協働設計:五十嵐悠介建築事務所/五十嵐悠介
構造設計:yasuhiro kaneda STRUCTURE/金田泰裕
施工:大同工業
用途:専用住宅
構造規模:木造・平屋建
敷地面積:1057.1㎡
建築面積:244.06㎡
延床面積:214.68㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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