Trans AD Project
Tomonori Takauchi
23. August 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
高内智紀 / TAADSによる渋谷区の住宅「Trans AD Project」レポート。国籍・世代・過ごし方の異なる家族が一つ屋根の下で暮らす状況で、各階で生活空間を分けながらも光の吹き抜け階段によって“心地よい繋がり”が持てる住宅。
Trans AD Project House, Tokyo, by Tomonori Takauchi / TAADS
RC造3階建て。施主はアメリカ人のご夫婦で、奥様の両親も一緒に暮らす二世帯住宅だ。
高さ制限や延床面積の関係で半分が1mほどセットバック。ボリュームをコンクリートの杉板型枠仕上げとタイル仕上げで質感に違いを生み出している。
施主の「外観に金属で特徴を出して欲しい」との要望から、2階の開口の隈取りと、玄関ポーチの屋根にスチールを用いて引き締めている。
玄関を入ると左手に大きな収納、左奥は車庫に通じ、正面にエレベーター、右手が居室となる。
ずっとアメリカで生活していたご夫婦の生活スタイルに合わせ、明確な玄関土間はないスタイルだ。
1階は親世帯の居室。父親が車椅子生活のためバリアフリー化されており、シンプルな動線や広い水回りとなっている。
階段室は引戸で全開にでき、吹き抜けに延長した空間とすることができる。
1階にはミニキッチン程度の設備で、基本2階で皆で食事したり寛ぐ同居型の二世帯住宅。
1階からの階段室吹き抜け見上げ。3層の吹き抜けで、トップライトから光が降り注ぐ。階段室はアートや家具を愛する施主のギャラリースペースでもある。
2階へ。繊細な階段とはせず、厚みのあるスチールの側桁と踏み板で、木部はサペリ材の名栗加工仕上げの重厚な意匠で存在感を持たせた。
手摺りは踏み板で支持、外側のガラス手摺りは側桁で支持されている。
2階LDK。階段はフロアの中心にあり、その周囲でシーンを変えている。
日中、高齢の両親が1階に、奥様は2階に、ご主人は3階の書斎で仕事、という生活パターンが要件としてあった。それぞれが異なるフロアで過ごしながらも気配を感じ合えるような構成を求められたことから、この吹き抜け階段を提案した。
それと同時に、吹き抜け階段は居室の隅々まで光を届けるための装置でもある。
また、アメリカで高い天井のある生活に親しんでいた施主に合わせて、可能な部分は折り上げ天井にしたり、この吹き抜けで上下に抜ける空間を作り出している。
西側接道面は大開口にして水平方向にも開放感を持たせている。サッシュはアルス製(ガラスはファイアライト)で、防火木サッシュとしては現在日本で最大サイズのものを取り入れたそうだ。
窓には電動ブラインドが備わる。
世界中を旅してきた施主が各地で集めたアートや置物が、随所にディスプレイされている。
キッチン周りはCUCINA (クチーナ) による製作で、4mの天板はシーザーストーン。
料理好きの奥様のためにLIEBHERR (リープヘル) の巨大な冷蔵庫や、ASKO (アスコ) のハイカロリーコンロを導入。
キッチンの横にはウォーキングワインセラーを備え付けた。多数のワインを所有していて、アメリカのワインロッカーにも数百本預けてあるとのこと。
キッチンの向かい側はゲストルーム。
ホテルの一室のような設えのゲストルーム。壁は敷地なりだが矩形平面に合わせて飾り棚を造作した。
ゲスト用の水回り。こちらでも飾り棚が造作されている。「こういったちょっとした棚を設計者が用意することで、住み手が好みの空間に演出するきっかけを作っています。」と高内さん。
3階。トップライトは幅1.4m、長さ3m。プロジェクトはこのトップライトありきでスタートしたため、準防火地域に於いてまず延焼ラインに掛からない位置に定めたうえで計画を進めた。
Low-Eガラスだがブラインドを閉め日射をさらに和らげることができる。
奥が書斎で、筆者の後ろが主寝室。
主寝室。敷地は少し高台であるためバルコニーから渋谷のビル群も望める。
主寝室の隣に水回り。ハイサイドから吹き抜けの明かりが差し込む。
都心の住宅ではなかなか庭を設けられないのでバルコニーは重要な外部空間となる。ご夫婦でよく食事をしたり、ワインを楽しむそうだ。奥に見えるのはBBQグリル。
高内智紀さん。東京理科大学卒業後、サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大学大学院で学び、帰国後キューボデザイン建築計画設計事務所で経験を積む。2020年に独立したばかりの37歳。
「都内の第一種低層住居専用地域内に、容積率MAXで3階建てをつくることを大前提に、複雑な高さ制限・日影規制との格闘から始まったプロジェクトです。クライアントは大枠では一家族ですが、国籍・世代・住み方の異なる4人の大人が一つ屋根の下で暮らす状況の中で、各階で生活空間を分けながらも”心地よい繋がり”が持てるように、建物中央にプログラムの核となる”3層にわたる階段・吹抜・トップライト”を設け、住み手のストーリーを構成しました。家具・アートをこよなく愛するクライアントのご要望で、大切なワインを貯蔵するワインセラーの設計にも挑戦しています。屋上から見渡せる“街の景色の移り変わり→Transition”を楽しむ、都心型住宅です。」
平面図・断面図 >> PDFダウンロード
【Trans AD Project】
設計・監理 :TAADS建築設計事務所/高内智紀
構造設計:正木構造研究所
施工:大同工業
用途:専用住宅
構造規模:RC造・地上3階建
敷地面積:168.94 ㎡
建築面積:120.71 ㎡
延床面積:289.50 ㎡
Posted by Neoplus Sixten Inc.
設計・監理 :TAADS建築設計事務所/高内智紀
構造設計:正木構造研究所
施工:大同工業
用途:専用住宅
構造規模:RC造・地上3階建
敷地面積:168.94 ㎡
建築面積:120.71 ㎡
延床面積:289.50 ㎡
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