浅利幸男によるテナントビル「フィオラ南青山」
浅利幸男/ラブアーキテクチャーによる港区のテナントビル「フィオラ南青山」の内覧会に行ってきました。表参道駅から3分程、ポルシェディーラー脇の小道を入った場所。
浅利幸男/ラブアーキテクチャーによる港区のテナントビル「フィオラ南青山」の内覧会に行ってきました。表参道駅から3分程、ポルシェディーラー脇の小道を入った場所。
まず目を引くのがファサードのデザイン。左から亜鉛メッキリン酸処理、竹型枠のコンクリート、オリジナル柄格子のスチール折れ戸。セットバックした空地はできるだけ平らな砕石を選んで敷き詰めた石畳。特定のブランドやショップにデザインを依頼されたものではなく、入居者不定のテナントビルだ。
1階テナント。折れ戸の内側は同じく亜鉛メッキリン酸処理のスチールサッシュ。
影もデザインの一部だ。
「大変だった」という外部階段。凝ったデザインがされているため精度が出しにくく製作に時間が掛かったそうだ。
地下はオーナーのネイルサロンで、計画段階から入ることが決まっていた。
階段好きの方は実際に見て頂きたい。
地下へ降り、振り返ると美しいカーブを描く造形が現れた。
チーク材の手摺は捻りながら壁に沿っている。滑らかな手触りだ。
階段の踏面は白い砂利を混ぜたコンクリートを研ぎ出し、端面を丁寧に切削した。
ネイルサロン施術室。ドライエリアには植栽と光が溢れる。
漆喰と回り縁で高級感のある仕上げに。
この後も何種類か出てくるが、今回浅利さんはコンクリートの表現を多数試みている。
右の壁はノロ残しされたコンクリート面と、仕上げられた面と対比させた意匠に。
洗面所も。
バックルームは2色の珪藻土を混ぜあわせて塗り込んだ壁とヴォールト天井。落ち着きのあるヘリンボーンの床。
ワインケーブのような雰囲気だ。
重厚な外部階段で上階へ。
3階テナントフロア。内部階段で4階と繋がる。
左の壁は木繊セメント板、階段正面が高圧洗浄、階段底面が打放し、天井が洗い出し、などコンクリート(セメント)の各仕上げ。これはあくまでもスケルトン状態だ。
テナントなので入居者によって全て覆われてしまう可能性はもちろんある。スケルトン引き渡しだがそれでも浅利さんのアイデンティティーがここまでさせる。
ちなみに天井には “リタメイト” を使用した。型枠の内側に張るシートで、コンクリートの表面数ミリに未硬化層を形成し、剥離後洗い出し仕上げにできるそうだ。
RCと鉄骨の混構造とした4階。開口には折れ戸は設えられていない。バルコニーにはオリーブのほか、ローズマリーなどのハーブ、多様な植物が植わっている。
反対側は外部階段に接続する。亜鉛メッキリン酸処理の鉄板壁と玄昌石の床に囲まれた踊り場。
外壁の竹型枠打放し仕上げ。
そして把手デザインの数々。
こちらは堀商店のレバーハンドル。
浅利幸男さん。「依頼を受けたとき、我々がスケルトンのビルを設計するとはどういうことなのか考え、ユニバーサリティのあるいわゆる雑居ビルとしてではなく、街並みをつくり永く愛されるようなものを目指しました。それには工業製品の羅列ではなく、職人による手作業と、素材が持つ温もりが不可欠でした。各部のコンクリートの仕上げもこだわり、スケルトンとインフィルの間、両者の新しい付き合い方を模索しました。」
設計監理:ラブアーキテクチャー 一級建築士事務所(浅利幸男、石毛正弘)
施工:アイガー産業
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